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私が苦手な樹種、カバザクラ 〜さらに樺(カバ)を知る〜 

拙記事は、樹種の事や木材の事、そして業務の事や無垢材商品の事などを取り上げて発信していますが、インターネットのないときから「自分の知りたい情報の詰まった樹木と木材の本が欲しい!」と思っていました。
樹木や木材に関する本はたくさん出版されていますが、総合的に知るには様々な書物を並べて調べる必要がありますし、情報が様々で、今回話題にしているミズメ一つとっても「梓」という非常に難解な樹木との関係性を紹介しているものは少ないからです。

研究者でも取材をするライターでもない私が、本格的な出版というようなことに手を出すことは非常に難しいのは性格的な問題で、全て完璧に情報をそろえられるようにならなければ!ということが理由なのですが、現在では樹種や樹木に関する情報を自分なりの切り口で出版できるのではないか、という道を模索しています。
インターネットのある時代、やろうと思えばどうとでもできるものの、性格的な問題・・・なんです。


冒頭から脱線していますが、その出版ということに関して使われる言葉である「上梓する」という語の中に、梓の字が見られます。
これは中国において、印刷に用いる版木に梓材を使用していたことが始まりだそうですが、これも前回お話していた中国での梓=(トウ)キササゲなので、ミズメを指すものではないのですね。

しかし、漢字辞典の梓の項には、「キササゲのこと」とともに「ヒサギ」の表記もありその隣には太字表記で「あずさ、カバノキ科の落葉高木。」の表記があります。
やはり、辞書の表記も並列しています。

梓2


ただ、日本では緻密で磨り減りにくく滑らかであるということで、版木に用いられてきた多くはサクラ材ですが、サクラと同様の用途として使われているのがカバ材であることは既にお伝えしています。
そして、カバの中でも硬質で緻密なミズメが、同じ用途に使われていたであろうことは想像に難くないところです。
ということは、「上梓する」という言葉も日本ではミズメに由来しているところもあるのではないか?!と勝手に想像したくなりますし、木材として考えるところの梓=ミズメという理解でよいのであれば、ミズメから生まれた言葉だということになるのかもしれません。
公的出版物である辞書にも並列表記しているのですから、必ずしも一つに集約するわけではなく、多くの意味のある言葉としての理解が良いのかもしれません。


さて、シリーズのにて、ミズメには間違われやすい名称と不本意な名称との二つがあると言いましたが、その不本意(と勝手に思ってしまう)な名称が、「ヨグソミネバリ」。
漢字で表記しましょう!
「夜糞峰榛」
先の辞書にも出ていますがなんと・・・ヨグソって・・・・
小学生男子が小躍りして喜びそうな名称(汗)ですが、どうしてこんなことになったのか。
それは古くはミズメ独特の香りが悪臭だと考えられたことが、原因のようです。

諸説あると言われてはいますが、ミズメが他のカバ材とすぐに判別できる点である特有のサロメチール香(サルチル酸メチル)が、刺激的な香りであったことに由来し、それを悪臭と感じたことが原因というのが一般的ですし、納得できるところ。


水目1


とはいえ、夜糞というのはどうかと思いますし、峰榛は「ヤシャブシ」という樹木の別名でもありますので、「めっちゃ臭いヤシャブシ」という意味で用いられたのでしょうかね。(もう一つの説は次回に。)
なかなかにファンキーな命名。古来の日本人の感性もなかなか現代人に負けじ劣らじ・・・
私にとっては、その夜糞な香りも樟脳のようなスーッとしたイメージで、好きな部類なのですけども、感じ方も人それぞれ。
皆さんもぜひ、どのあたりが「糞」と言われるほどの香りなのかを感じてみてもらいたいものです。


ミズメの学名は B.grossa ですが、その意味は「大きな」です。
カバ属の中では最も大きくなると言われているところに由来するのではないかと思いますが、定かではありません。
しかし、木材としての優秀な性質を考えると、用材としての有用性の「大きな」ことは言うまでもありません。

平均比重0.72(0.6〜0.84)と、有用とされるマカバに比べても重硬であることから、マカバ同様の用途や家具材や器具材、建築材、フローリング、そして敷居等に用いられます。
平均的に暴れにくく狂いが少ないことなどで、木型材(ガラス木型など)への利用や、硬くて音の伝導性が良いということで古くは、三味線の竿や琵琶の胴としての用途もあるのだとか・・・
生活用品としてはお椀などの刳りものや櫛、洋傘の柄など。
珍しいものでは、写真の暗箱というものもあったそうです。
素材として以外にも、薪やパルプ用材としての用途もあるので、やはり用途の大きな樹種であると言えるでしょうね。

ミズメ4


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