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茂みかきわけ袂まで 〜沢田の大杉〜


自分でも意外なほどに、超々長期掲載となってしまった「樺(カバ)を知る!」シリーズ。
書き出すと止まらない樺への想い・・・
カバザクラとの誤解解消も含めて、ため込んできた想いが爆発したシリーズとなりました。
その影響?!で、ずっと掲載できていなかった巨樹の記事を久しぶりに更新したいと思います!

私が巨樹をめぐる時には、巨樹の書籍やネット記事を参考に予習をしていくのですが、情報があるからこそ助かるメリットと、知っているつもりで油断してしまうデメリットを感じることがあります。
今回でいうと、油断。

今から紹介する場所もそうですが、同日に廻った場所でことごとく油断によるちょっとした後悔をしてしまいます。
例えば、社寺の境内にある巨樹と認識して向かうと「裏山」に位置している為、10分ほどの間を暗い林間を進まなければならず、挙句到着すると「熊!出没注意!!」と、ご丁寧に熊が襲い掛かろうとする実写写真を付けた看板があってチビリそうになり、護身用ストックの不携帯をくやむこと。
又は、道路からすぐの位置にあると確認し向かった現地では、今年の長雨の影響もあってか雑草が生い茂り、足を踏み入れ難い状態になっているものの、巨樹はもうその目の前。登山靴でも履いていればまだ向かうつもりになるものの、普通の靴では当日降っていた雨の影響でズブズブになってしまう上、あちこちに「マムシ注意!!」の看板も・・・
もう、えぇ加減にしてくれよ・・・とげんなりするのですが、自然の生き物の中に入るのは私の方なので、上記の状況を確認するべきなのです。

さて、そんな油断とともに訪れたのは島根県吉賀町指定の天然記念物である、「沢田の大杉」。


沢田の大杉 1


大杉手前の道路にある解説板。
樹齢800年とありますが、胸高周囲が7.2m。
巨樹を目の当たりにして大きさに圧倒されるものの多くは、経験上では胸高周囲10m以上のもの。

それからすれば、そこそこだな・・・・
そんな考えが先入観となり、この大杉を目にした時の驚きをさらに大きくしたのかもしれません。

大杉までは道路から小道を少し歩き、視界が開けた先にあるのは墓地。
そして、その背後に驚く樹形を呈しているのが、沢田の大杉でした。


沢田の大杉 3


この日は、しとしとと降る雨で空はどんより、そしてその影響で大杉の背後の林は吸い込まれるように暗い状態。
その条件が、異形の杉の存在感を非常に高めていたのは言うまでもありません。
対面して先ず、先ほどの胸高周囲のデータのみで判断できないことを実感。
太さだけではない存在感。
それが巨樹を印象付ける大きな要因であることはわかっているつもりですが、数字に左右されるのは人の常・・・

離れた場所からその見事な樹形を眺めるのももちろん良いのですが、やはり近くでその姿をつぶさに観察したいと思うのも人の常・・・

しかしながら上の写真の様に、大杉の周囲には膝上に達しようかという高さの茂みがあり、近づくための道がない。
いや、もしかすると違う場所から入られるのかもしれないものの、ムシ暑さと雨で探す気力がない・・・

悶々としながらカメラのズーム機能を使って、撮影をする。


沢田の大杉 4


写せば写すほどに近くに行きたい。
けれども目の前にはグリーンの壁・・・

雑草の中がどうなっているか分からないこと、そしてなによりもここに来る前に訪れていた場所に「草むら、マムシいるぞ!」の看板があり、自然の生き物大嫌い(出会いたくない)な私にとっては、目の前の雑草がマムシの巣窟に見えて仕方ないことが、足踏みをさせる理由でもあるのです。

とはいえ、もう少し近づきたい・・・えぇーい、かき分けて行ってやる!!
そう決心し、手持ちの傘(こんな時に限って、よそ行きの傘・・・)をたたんで除草棒代わりにし、足で踏み固めながら草の中を進んでいくことにしました。
そしてやっとたどり着くことが出来たその姿は、遠くから眺めるのとはまた異なる印象的な姿でした。


沢田の大杉 7


年月を経た暴れ杉というのか、神秘的な異形というのか。
幹の上部で横方向へ張り出した後に天に枝先を向ける姿は以前紹介した、岩倉の乳房杉と重なります。
そしてその乳房杉も、離島ではあるものの島根県。
乳房杉には近づくことが出来ませんが、沢田の大杉はその傍まで来ることが出来ました。

見あげる枝は、自然というよりも野性的と形容したくなるような様相。
しかしながら、よく見ると枝が剪定された跡があります。
折れたのではなく、人為的に切られています。
先端が枯れたのか、理由はわかりませんが管理の手が入れられているようです。

ということは、私が訪問した時がタイミングが悪かっただけで、普段はきちんと整備されているのかもしれません。
草むらも刈りこんであるのかもしれません。
そう信じよう。

沢田の大杉 10


大杉の周囲は完全に開けていて、空を見ても空間の占有率は100%と言っていいくらい。
周囲の竹に取り囲まれているのか、もしくは竹が入り込めないのか、見事なほどに独立した占有空間なのです。
そんな状況なので、天に伸びる枝の外側に向かって小枝が伸びて、そしてその小枝からまた枝が伸びる形で広がっていることが、異形を増幅させているとも感じます。

大杉に手が入れられているのは、墓地から見た大杉の奥に回れば分かります。


沢田の大杉 11


巨木を振興している状態でわかりやすいのは注連縄ですが、ここでは祭祀の跡でしょうか、写真の様な御幣様の飾り物がありました。
この手前には、竹と縄で造られた手製の簡易鳥居のようなものも・・・
先の様に、大杉の周囲は開けていてちょっとした「広場」の様になっているのですが、もしかすると祭礼というか地域の祀りごとがこの場所で行われているのかもしれません。

そういった事情は地域の方に聞くことが一番なのですが、この日は雨の中草むらをかき分けたことと、蒸し暑い上にマムシの恐怖。
そして写真からは決して伝えることのできないもう一つの原因によって、撮影後は一刻も早く車に戻りたい心境でしたので、情報収集する気にはなれませんでした。


沢田の大杉 14


左に立つ私と比べると、大杉のサイズが分かってもらいやすいですね。
幹の太さもさることながら、上部の分岐した大枝の広がりと太さの迫力は圧巻。
扁平であるとはいえ、大枝の一本ずつが通常の幹一本に相当するような太さなので、重力に反して頭上にあることが恐ろしくもなるほどです。


沢田の大杉 8


さて、サイズ感はこの比較で伝わると思われるものの、伝えることのできない早く戻りたい原因。
それは、この状況から想像に難くない「蚊と虻の襲来」です。

どこか余裕で大杉に持たれているように見せていますが、カメラをタイマーセットする時には顔周辺から足元まで、ブンブン・プ〜ンプ〜ンと寄ってくるのです。
大杉の隣に来ても、動くことをやめるといつの間にか吸血されている始末で、一秒たりとも動きを止めたくない状態。
しかし、動いていると雨に濡れているのか汗なのかわからないくらいにびっしょりと濡れてくる自分の汗でべたつく為、写真のアングルや明るさに集中できない。
普段であれば、刻々と変化する状況によって表情の変わる巨樹を前にすると、帰りたくなくなるものですがこの時ばかりは一刻も早く撮影を終えて戻りたい気分。

例えるなら、ラピュタの中心部に到達したムスカが飛行石を手にラピュタを手中にしようとしたとき、彼の周囲に虫が群がってきていたような状態・・・
もう、一心不乱に周囲を払いのけているような、そんな感じです(汗)。

それでも、戻り始めると別れが惜しいもの。


沢田の大杉 13


草むらにカメラをセットし、近づきながら上る時に見上げるようなアングルで一緒にカメラに収まりました。
想像以上に見事な姿と、撮影できた写真のアングルにちょっと自己満足を感じた沢田の大杉。

実際の私は、マムシへの警戒と虫たちの襲来に神経をすり減らしヘトヘト、服は汗でビショビショで満足と同等以上の疲れを感じていました。
その上、時刻は午後5時半。
今からの帰宅には5時間以上の高速道路走行が待っているのです。
事前情報との違いは油断でしたが、帰りの移動時間は巨樹を堪能する為の代償。

双方に疲れを感じながら、それでも心動かされる巨樹との邂逅を止めることはできない。
改めてそう思う、雨の夕暮れとなりました。


沢田の大杉 5


沢田の大杉所在地

島根県鹿足郡吉賀町沢田 指月神社東側
(もしかしたら、神社側から到達できるのかもしれないが検証していません。)

道路広い場所に駐車可能


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