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うららに待つ(松)は桜に非ず・・・ 地松〜赤松と黒松 ─

今年はゴールデンウィークも何も関係無しでぶっ飛ばして松・松・松・地松!!!

ということで、なかなか終わりを見せない地松のお話ですがいよいよ着地点を探す頃合いの様です。
前回、現在の豊かだといわれる森林の中に、松の居場所がなくなっていることを伝えましたが、それについては「公園の父」という異名を持つ林学博士であり造園家の本多静六氏も、自身の著作「赤松亡国論」にて赤松が作る林相によっては、森林の荒廃や環境の悪化を見ることになるというように記されていますが、もちろん、赤松が悪いのではなく樹種によっては、繁栄していてもそののちに待っている環境が、必ずしも良いものとは限らないということでしょう。
遠くから見れば緑いっぱいの山が、実際にはスギ・ヒノキが密に茂り、光の届かなくなった森であったりするように・・・

しかし樹木たちは、彼らそれぞれの生き方の戦略によって現存しているもの。
松の場合は、種を風によって運んでもらって繁殖するタイプですので、やはり開けたヤセ地で風が強いところでなければだめなのです。
生育を示す語呂に「谷スギ・尾根マツ・平ヒノキ」とあることからも分かる通り。

松ぼっくり化粧

松ぼっくりに隠された種は、カエデと同じように風に乗って運ばれやすい仕組みになっていますが、自分たちが生育する環境に飛ばしてもらうために、強風で且つ乾燥しなければ種を放出しないようになっています。
それは、「松ぼっくりマジック」で実証した通り。
早くから種を作ることができる(10年くらいらしい)という性質も、そういった繁殖方法を優位に運ぶことを目的として進化したのでしょう。


さて、松の外郭的なお話しから始まったシリーズですが、ここで松の材としてのお話をしておかないと、材木屋の記事ではなくなってしまうので、触れておきますよ!

松を県木としているところは7県もあるものの、意外と身近に感じないのはやはり建築から松が遠ざかったからでしょうか。
今までも書いていた通り、一昔前ならば「たいこ」といって、丸太の左右のみ製材で擦り落とした状態のものを使っていたものです。

地松24

日本の松の大きな特徴はその強度と艶。

強度というのは、その出番が多いと予想される屋根や家の重さを支えるための「曲げや圧縮」という力に対しての強さですが、どの数値を比べてみても日本を代表する優良樹種である桧を10%〜20%以上しのぐのです。
そして、それだけの強度とともに注目すべきは「めり込みに強い」ということ。
どういうことかというと、木造住宅に揺れや圧縮などの力がかかったとき、構成される木材同士が互いにめり込みをしながら強度を発揮するといわれています。
つまり、金属のようにガチガチの状態ではなく細胞を持つ木材だからこその柔軟性で、力を吸収しながら外力に耐えることができます。
柔軟でありながら、つぶれることなく耐えるにはある程度のめり込みを許容しながら、その力に耐える必要がありますが、松はそのめり込みに対して強くそして粘りのある木材性質とともに、「剛でありながら柔」な構造材として存在するのです。

もちろん、木材としての性質だけではなく、その存在感があることも大きなポイント!
人は、目で見た視覚要因から多くの情報を得て物事を判断しています。
住宅などの建築も一緒。
印象的なものを「良い」と感じるのも、目で見た印象が自身のイメージに触れるからですが、日本の松は特有のそのダイナミックな木目で「力強さ」を、そしてその美しく光る艶のある仕上がり面で「美しさ」を表現するため、木材を見せて使うような住宅や店舗にこそ、安心感をもたらす松の梁材を使ってほしいものです。

さて、ヒノキやスギでも同じですが、松も各地の良材に名を付けて呼ばれるものです。
鳥取の大山松、鹿児島の霧島松、岩手の南部松、宮崎の日向松(アイグロらしい・・・)、そして山口県の滑松です。
銘木だけではなく、造林種としても杉・桧・唐松に次いで多いんですよ。

日本だけではありません。
松は中国や韓国などの建築でも、とても貴重なものとして扱われています。
韓国では、宮殿建築に使われる樹齢150年以上の年輪の中心が真円を描くような「春陽木(チュンヤンモック)」と呼ばれる見事な松が多くあったそうです。

アジアの松


中国では昔は楠木といって、クスノキではなく日本には分布しないといわれている、耐久性が高く虫がつきにくく、しかも加工がしやすいという樹種が、紫禁城などに使われてきました。
別名を香楠や金糸楠と呼ばれていたものですが、現在は枯渇しているのでその代用として松が使われているらしいのです。
(日中韓 棟梁の技と心より)


本当は、スギやヒノキよりも人間に近い樹種かもしれないマツ。
縁起の良い樹種という側面もあるものの、もっと「生活に近い」ところで人間に寄り添い、また人間もその力を借りて発展してきた、いわば人とマツはマツタケのような関係だったのかもしれません。
それでも、緑輝く山々に松の姿は少なくなっています。
今、建築材を通してもう一度地松との関係を見直し、遠くなってしまった距離感を縮める必要があるのではないか・・・そう思っているのです。

地松16


2018年11月17日の「シリーズ追記」、地松の曲がる訳も是非ご覧ください!!


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