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うららに待つ(松)は桜に非ず・・・ 地松〜赤松と黒松 ◆

さて、前回で神様との関係や寿を意味することでおめでたい樹種である事がわかった「松」。
本来はお正月に特集すべきかな、と思うところもあるものの敢えて、この桜のシーズンにもってきたんですから、ちょっと徹底的に「日本の松」を知りましょう。

そもそも日本の松、通称「地松(じまつ)」とは何なのか?!掘り下げていってみましょう。(樹種名に漢字とカナが混在しますがご容赦を・・・)

日本の松=地松は、世界でおよそ100種ほどあるというマツ属の中で日本に自生しているもので、あの尖った葉っぱによって「二葉松」と「五葉松」に区別されています。
二葉松は建築に多く利用される今回の主役であるアカマツ・クロマツ・そして沖縄に分布するリュウキュウマツ。
五葉松はゴヨウ・チョウセンゴヨウ・ヤクタネゴヨウ・ハイマツという普通ではあまり聞かないものもあるもの達。
世界で見てみると、マツ属は主に北半球全域に分布していて、南限は赤道直下あたりだと言われています。
もっとも広い分布はオウシュウアカマツ。
地域によって差はあるものの、これぞ無垢の針葉樹!と言わんばかりの「木そのもの」をイメージさせる様なレッドパインや、日本の建築において、見えないところで活躍する下地材としても流通しているロシア産アカマツなどがそれに当たるのでしょう。

世界に分布を広げるマツ属ですが、今回はその中でも本州での建築になじみ深い「アカマツ・クロマツ」をとりあげます。

赤松(アカマツ) 日本のアカマツをJapanese red pine
東北を除く、尾根筋に生息する樹木。
学名 Pinus densiflora Siebold
Pinus はラテン語の松を意味するところから、densiは密に、floraは花を意味する言葉。
あおあおとした松に、花や蜜という言葉が連想しにくいのですけども・・・

地松23

樹皮の色が赤いこと(個体差あり)、新芽の茶色いことで後述の黒松(クロマツ)と区別されている。
アカマツの天然の品種は「ウツクシマツ」という滋賀県甲西町で自生している樹木だそうですが、ウツクシマツは高さの低いところから樹幹が分岐し、松とは思えない様な樹形になるので、そこからあの雄大なアカマツを想像しがたいところです。
アカマツはスギやヒノキと同じ針葉樹ですが、その中でも重硬な部類に入る平均比重0.52(0.42〜0.62)という値で、前回までに登場した様な「重い屋根を支える部材」としてや、勇壮さを見せるために視覚的に迫力を感じる様な使い方をされてきたと建築になじみ深い樹種だと言えます。

森林資源の移動が容易ではなかった昔は、現在の様に多くの樹種を活用することができなかったので、松は建築以外にもオールマイティーに使われていたそうですが、やはり建築以外で特にまず目立つのは土木用材。
芯材の水中保存性が高いという特性から、埋没させる杭には相当多く使われていたようです。
現在でも、ビルなどの高層建築において地盤掘削をしていると、昔に使われていた松の杭が良好な状態で地中より見つかる、というケースが実際にあります。
また、城郭の堀の石垣の基礎にも、やはり耐水性をもって使われたという記録があるそうですから、「へぇ〜、ヒノキじゃないんだ・・・」と浅はかにも思ってしまいますが、やはり「水中保存性」という点やなにより石垣のような建築の中でも遥かに大きな荷重を支える材としては、松の重硬さが必要だったのかもしれません。

そして少し前までは、工事現場の土留めの板材や杭などの用途がありましたが、こちらはより安価で大量に供給できるラジアータパインなどに転換されたこともあり、すっかり日本の松の姿を見ることは無くなりました。
そういえば、以前の記事で「地松の杭丸太が確保できない」おそろしさをお伝えしたことがありますが、杭丸太でも見かけることは少なくなりました。

地松3


おっと、忘れてはいけません。松はアカマツだけではありません。
黒松(クロマツ) 英名表記をJapanese black pine
先のアカマツが尾根筋に生息するのに対し海岸沿いやより環境に厳しい場所にも適応するのがクロマツ。
例外的に東北にクロマツが無いのは、一説に寒流の影響だといわれています。
学名 Pinus thunbergii Parl
thunbergii はスウェーデン人のチュンベルという人名から。
各地にある堂々としたクロマツは、その地方の景観を決定づけるほどに見事なものが存在します。
アカマツは別名「女松」、対してクロマツを「男松」と言ったりしますが樹形などにもよるのですが、葉もクロマツの方が長く硬いことも一つの要因だと言われます。
比重はアカマツに比べて若干大きく、平均0.54(0.44〜0.54)とされていますが、双方ともに個体差がある上に、立木では区別されるものの、用途や性質などがほぼ同等である上に、木材になってしまうと扱っている人間も殆ど見分けがつかないために、流通上はひっくるめて「松」として扱われることが通常です。

顕微鏡でみても判別しにくいと言われる違いを敢えて比較するのであれば、材としてはクロマツの方が樹脂道という細胞が顕著だと言われる分、より脂気が強いように感じますし晩材や早材の色目も、アカマツより若干はっきりとしていて茶色が濃い様に感じます。
そして公害や潮にも強いことも、アカマツとの生息地の棲み分けができている要因でしょう。
また、アカマツに比べ材が若干粗く脂気が多いので器物やお盆などの加工品にされることもあります。
とくに、脂木で作られた器やお盆はまるで宝石のように透明であり、魅惑的な濃い茶色を見せてくれます。

地松18


樹脂道で脱線しますが、松ヤニを思い浮かべる樹脂道であるものの、一時期百貨店などでも販売されていたまな板の素材である「スプルース」にも樹脂道が含まれます。
松ほどは顕著ではないものの、稀にヤニとして容易に確認できるものもありますから、昔の木材人が「スプルースはまな板にはするな」と言っていたのは、そういった理由からで、ヒノキの様な綺麗な色と素直な木目が印象的な樹種ではあるものの、やはりその木材のもつ特徴を考慮して使おうという、木の性質を知ったうえでの言葉だったのだと思います。(といっても、自宅でスプルース使ってますけど・・・)


しかしながら、この様な違いがあるものの、自然の世界の中では交配するもので、通称「アイアカ・アイグロ(Pinus densithunbergii)」が存在しますから、事細かに分類するよりも、大きな視点で見ることが、雄大な樹形の松という樹種にふさわしいと思います。


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