空を見上げて
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土と環境と生命力 〜胎金寺山口の天狗杉と奥の天狗杉 1〜

さて、前回に山を、木を知る勉強会のことをお話しましたが、今回の勉強会のフィールドになっていたのは京都府の日吉町周辺地域。

豊富というか緑に囲まれた、というような環境なのですがそんな地域に巨樹が存在しないわけはなく、自宅から勉強会の会場までの間の山中に「天狗杉」なる杉の巨樹の存在を確認したからには、行かずにはおれません。
勉強会に遅れないように、いつも通りの超早朝出発で現地に向かいました。

超早朝出発な理由を先に言っておくと、もちろん勉強会の時間に間に合わせるためではあるのですが、以前の巨大株杉群のところでも書いたように基本的に「ハチ、ヘビ、クマ、ヒル」などの自然がめっぽう苦手です。
山は大好き、木も好きですが実は全然ダメなのです。
ヘビは子供の頃は良く触ったのですが、大人になると警戒心もありダメ。ハチは小学校の時に下校中に友人が刺されてエライ事になったので、おそろしくてたまりません。
クマさんなんて、絶対勝てませんし・・・・(涙)

兎に角、万が一の事があるといけないので早めに出発しておくのです。
山中、携帯の電波が届かない、なんてよくあることですからね・・・

そうやってビビり心全開でやってきたのはここ。

胎金寺山口の天狗杉10

京都府南丹市園部町にある摩気神社。
とても立派な門の奥に、更に立派な社殿が建っていて屋根に苔むす姿は何とも言えない存在感。
が、今回はそちらに気をとられるわけにはいきません。なにせこれから「その巨樹がどこに所在しているのかわからないままの」山に登らないといけないのですから…
そう、山中の巨樹でもう一つ困るのが正確な所在地がわかりにくいこと。
大抵の場合は見つかるのですが、標識がないことや所在がはっきりしないところに向かうというのは結構労力を消費するものです。
それも早朝に一人で。
言い訳はここまでにしましょう・・・

早速社殿に向かって右手に伸びる道を進み、山中へ。
社殿から右手にすすんで沢を渡って、そのまま目前に見える山にまっすぐに入りそうになりますが、そうではなく社殿の後ろの山に向かうように伸びる沢筋を左手に見て辿る様に登る道を行きます。
途中山道が右に少し逸れていきますが、それをいってもいいしそのまま沢沿いをいっても大丈夫。
15分ほどでしょうか、沢沿いの登山道でいくと道が左に大きく曲がる手前の左眼下にその姿を確認することができます。

胎金寺山口の天狗杉1

胎金寺山口の天狗杉です。

登山道から見てもその立派な姿はその字のごとく「抜きん出て」いますが、急斜面にも関わらず美しい樹形を保っています。
いや、美しさの中に荒々しさを秘めているというのか・・・
離れたところからだけでは物足りませんね。勿論です。
登山道を来ても、注意すれば天狗杉まで斜面を下りる事ができますし、沢沿いを登った場合はすぐ下に出るので、よりスケールを大きく感じることでしょう。

胎金寺山口の天狗杉5

沢沿いにまで降りていくと、今までは大枝に隠れていた樹幹が見え始め、大きなこぶや枝と呼ぶには太い枯れ枝が目立ちます。
この辺りは植林によって育ったであろう木々が整列しているところもある中で、一際力強く大きくすがすがしく立っています。
もちろん人が入るか否かくらいの時期に、実生で育ったものなのでしょうが、結構な斜度の斜面に対してまっすぐに立っている。

根元の見え方でその斜度がわかるでしょうか。
斜面上と下で高低差は1m以上です。
こんな斜面に対しては、もっと根の部分が張り出して大きく山側にそりあがるように成長するもので、根曲がりにになるはずだ。
それなのにこんなにまっすぐに・・・


初めはわかりませんでした。
なぜだろう、まっすぐに育つこの場所だけ大きく空が見えるほど樹間が開け、天狗杉を仰ぐことができる。

やっぱり杉が好む水も豊富にあるし巨樹が生育する環境は特殊なんだな・・・、そんな感じでしか見ていませんでした。
しかし、今回は(今回からは・・・)違います。
予備知識を得られたからです。
それは決して巨樹だけに当てはまる特別な法則ではなく、山という環境が嘘をつかない証拠だったのです。

そう感じるヒントは天狗杉のすぐ近くにあります。
実は、入山からずっとたどってきた沢筋。
それが大きなヒントなのです。

胎金寺山口の天狗杉4

先ほど、スギが好む水が豊富だから巨樹になったんだな、という想像をしたと書きましたが、天狗杉のすぐ下方には写真の細い滝筋が通っています。
ここは水の通り道。
山の中の水の道なのです。そして、水の道が数百年の歴史とともに深くなり、谷のような形状になり現在の空の開けた環境を生んだようです。
そしてその環境こそ、この天狗杉を育む環境だったのです。
いや、補足せねばなりません。
天狗杉が潤沢に水を得たわけではありません。
おそらく同時期には周りにも多くの木々があり、沢のすぐそばにはさらに大きく育っていたものもあったのかもしれません。
しかし、水が多いだけではだめなのです。
現在の位置で芽吹いたからこそ、現在の天狗杉があるのです。

胎金寺山口の天狗杉3

一見、枯れて元気のないようにも見えるかもしれないその枝ぶりもそう。
大きく長く、そしてたくさんの葉をつけすぎることは、成長のエネルギーを大きく消費するということ。
たくさん作りたくさん消費する、というイメージでしょうか。
だからバランスが大切なのです。
巨樹においても、しっかりとした幹で元気そうに葉を茂らせているにもかかわらず、実際の樹勢は衰えているものもあります。
それに対して天狗杉は、現在の環境でのベストバランスで生きているのです。

その証拠に見上げれば立派な命の緑が傘を広げています。

胎金寺山口の天狗杉7


だからこれだけ美しいプロポーションを保っているのでしょう。
風格もあり美しい。
画面でしか見ることのできない女優さんの様。


これらの要素があったからこそ、自分の目の前に巨樹がいる。
そう思うと、今までは巨樹そのものの大きさや木としての性質などにしか気が付かなかったところが、周りの環境や歴史にまで考えがおよび、深い巨樹巨木の世界にさらに引き込まれていきます。

胎金寺山口の天狗杉8

ちょうど沢を見下ろす位置(天狗杉の裏?!)に回ると、下部の枝をからしているのがよくわかります。
戦略です。生き方なのです。すごいです。

おっと、堅苦しいことを続けてしまいました。
今回は山中ということもあり、正式な看板や説明板はありません。ゆえに、別の記事から参照した記述によると、目通り7,6m、樹高40m、樹齢300年以上ということです。
根元が斜面だけに、斜面下部と上部での差が7,6mという数字がどの部分かという見方の違いはありますが、立派な太さにかわりありません。
周りの人工林の大先輩!!
伝説の偉人!といったところかもしれません。

実生と植林の違い、いや一口に比較はできませんがやはり違いが見られます。
植林でここまでの巨木になると、それこそスラリとしながらも太さを誇る「歴史の証人」のようになることでしょう。
しかし、枝やこぶもそうですが、美しい樹形の中にも荒さを感じるのはやはり実生で環境とともに生きてきた強さなのでしょう。

いつもならば、目の前の巨樹についての感想がでるところですが、勉強の甲斐あって周りを見ることができたと自負しています。
そういった巨樹巡りもいいものですよ。

そうそう、最後に昌志メーターを・・・

胎金寺山口の天狗杉6

ちょっと土と同化してわかりづらいことと、本当は写真左からの「見上げるアングル」からいきたいところのですが、なにぶん三脚を使用している都合、無理があるのでご勘弁を。
おすすめは見上げるアングルです。より一層巨木感が高まります。


さて、山中までやってきた私ですが、ここが終点ではありません。
実は天狗杉にはまだ続きがあるのです。
その名称は1本ではなくもう1本にもつけられているのです。
ここよりもさらに奥に「奥の天狗杉」があるのです。

しかしながらこの日は時間の都合がないことと、それより先に探しに向かうも見つけられなかったこともあり次の機会に持ち越し。
そのために、記事も次回に持ち越し!ということで、次回は再挑戦にてたどり着いた奥の天狗杉に向かいます。

胎金寺山口の天狗杉所在地

京都府南丹市園部町竹井宮ノ口3 摩気神社裏山

駐車スペースは神社の駐車場になるようなので、できれば一声かけておきたい。

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