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秋の名月と月に棲む樹 桂(かつら) 巨樹部

名月のシーズンに始まった桂特集の最期を飾るのは、やはり私の得意分野である巨樹であります。

一口に巨樹といっても様々な樹種、そして多くの見事な樹形を持っているものがありますが、桂はまた特別です。
実は、日本全国の巨樹ランキング60本を樹種別でみると、1位は当然?のクスノキで34本、2位はやっぱりで11本、そして次に桂の5本ということで、桂がランクインしているのです。
クスノキの巨大さや迫力というのは、常緑樹であることも手伝ってかある意味圧倒されるほどの見た目で、それ一本で小さな林のように感じることすらあります。
すぎも「直ぐい木」という割には、ワイルドすぎるやろ?!と言いたくなるような生命感と躍動感にあふれる巨樹があり、幹回りも堂々としたものですから、心に残ります。

それらに比べるとやはり桂は特別。
何せ巨樹の一つのバロメーターである「太さ」というものを言及するにはちょっと違うような気がするのですが、それでも大地から伸び上がるように突き出た萌芽枝に囲まれた、主幹の存在などどうでもいいと思わせるような特異ないで立ちは、木々がすべてみな一様ではないことと、前回までにお伝えした「桂の生きていく戦略」を如実に見ることができるものとして、ありがたくさえ感じるのです。

そんな桂の巨樹で紹介するのはこちら。

古屋敷の千本桂4

久しぶりに大雪での巨樹巡り写真がでましたねぇ〜!
そうです、ごらんのとおり冬真っ盛り?!のため葉がなく、しかもクスノキのような太い幹が見えないことから、若干迫力に欠けますが、これが「古屋敷の千本桂」です。

古屋敷の千本桂1

千本桂というのはしばしばある名称ですが、もちろんそれは、この見た目から由来するのでしょう。
この千本桂のほかにも同じような樹形の桂を見ますが、千本は大げさでもよくニュアンスの伝わる名称であることには間違いありません。
看板に所有者の方の名前があるということは、この一帯を持っていらっしゃるのか・・・
一段高くなった道路から、階段を下りて桂の足元まで行けるようになっているのですが、解放していただいていることに感謝したい気持ちです。

推定樹齢580年。まだまだ老木への到達には時間がありそうですが、樹高が25mということで、杉のような仰ぎ見る迫力というよりは、やはりワンダーランドへの入り口でもありそうな主観の位置を探すしたくなるのが、桂の巨樹なのかもしれません。

古屋敷の千本桂5

巨樹巡りになれる(?!)と、どのポイントに驚くか、というのも楽しみのうちの一つで単純な大きさではなく、やはりその佇まいから感じる空気が特別な雰囲気を醸し出していたりするもので・・・
本当は、千本桂も主幹も伸びた上に密集した萌芽枝があると・・・と思ってしまいますが、実は太く伸びていたであろうと思われる主観はすでに伐採されており、そのために胸高直径の割には「頭が軽すぎる」印象を受けるのです。
それもあり、若干スカスカ感が否めませんが、実はこの古屋敷の千本桂は、環境省の調査で単幹で元日本一の桂と言われていたものです。

古屋敷の千本桂7

看板にも「県内全樹種中第一位」という冠がついていますが、現在は山形県の最上郡にある「権現山の大桂」が日本一とされているようです。
幹回り19.2m、樹高40mといいますから、私はまだあったことはないですが、写真で見る限り立派な桂ですが、おそらくこの千本桂も、グリーンシーズンには印象が一味違うのだろうと感じます。

特に東北には桂の巨樹が多くありますが、やはり樹形はこのような箒型が多く見られます。
桂と言えばこのスタイル!という固定観念ができてしまいます。

古屋敷の千本桂9

こうやって道路から降りて桂のそばに立つとやはり、大きい。
上から目線でいると、どこか神秘さや大きさに対する畏敬の念も薄いような感じがしますが、人間、見上げるという行為に至ったその時点で、心のどこかで自分を超越したものを見るような感覚に陥るのでしょうか。
そうでも感じてしまうような、異なった感覚で、太い主幹がなくとも十分に立派で屹立するその姿は、樹木という生き物の生命力を感じるにも十分な存在感です。
また、雪のせいで根元がはっきりと確認できません(膝まで優に入ってしまうような積雪・・・)が、幹からさらに根が傾斜して伸びていることもあり、雪のないシーズンにはさらに広範囲な桂の肌が目に飛び込んでくることから、単純な胸高直径では語り切れない千本桂の迫力を見ることができるようです。

古屋敷の千本桂8

こんな見事な桂のすぐそばにまで車で寄ることができるというのは本当にありがたいこと。
桂は杉と同じくらいに水の好きな樹種。
ゆえに山中の沢沿いや渓谷に位置することもあるものの、周りには民家も見える中でこの迫力です。
案内看板にもあるように、「水飲みに立ち寄った」という記述からもこの場所に水があふれていた様子がうかがえます。
また、その続きにある「立てたまま忘れていった杖が」の行、どの地方にも必ずある「弘法大師の杖が・・・」と同じく、杖が大樹になる伝説をも持っているのです。

まぁ、この時は水飲みどころか靴に積もる雪で足の冷えることが第一で、その場所、を探すことはできませんでしたが、きっと清水湧き出る環境だったのだと思います。

古屋敷の千本桂3

残念なことに、あまりにもうずもれる雪の堆積により幹周辺での「昌志スケール」の実行はならず、仕方なく上の道路から記念撮影を兼ねた大きさ比較。
うーむ、どうも伝わりにくい。
やはり、広がる根と立ち上がる萌芽枝とともに映ってこそ、迫力が伝わるというものだと思いますが、今回は勘弁してください。
せっかくの元日本一ですが、雪の力に阻まれてしまいました。
もちろん、この時は仕事で訪れた場所もすべてが雪の中で、整地してある場所以外はとても入っていけるような積もり方ではなかったために、やむなしです。

余談ですが、宿泊していた宿のおかぁさんに、「お客さん、明日からすべるの?!」と声をかけられました。
滑る=スキーです。
なんといっても、泊まった宿が悪かった。
学生のスキー部が合宿に来ていて、スキーをしない(できないよ、仕事だもん・・・)客が私一人という環境でしたから、「仕事で泊まっている」と伝えた時の残念そうなおかぁさんの顔。
忘れられません。私も滑りたい!!食事のテーブルの横には、快晴の空にダイブするようなゲレンデの写真・・・あぁ、生殺し・・・

それでも、こんな季節に会う桂もまた格別で、東北の良い思い出になったことは言うまでもありません。


古屋敷の千本桂6

月から始まって雪に終わる。
白銀の世界に棲む桂の存在感は、確かに私の心に刻まれたのでした。


古屋敷の千本桂所在地

岩手県九戸郡軽米町晴山第19地割122

駐車スペースあ特別設けていないように見えましたが、桂に降りる所に止めることができます。


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