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誰かが、何かが犠牲になっていく森林と木材

木材の需要や商品といったものは、時代時代によって様々に変化していくのですが、悲しくなる現実に行きあたることもあります。

どうしても生産や伐採が難しいものや、物理的に求める事が不可能なものなどは仕方ないと納得できますが、今回は納得できない・・・というか、現実を目の前にして頭の中と自身の現実が一致した瞬間に心底状況の深刻さを感じた、というようなお話。

弊社でも、国産黒松雪待赤松石山赤松などの日本の松林からの贈り物をラインナップしていますが、それらのコラムでもお伝えしている通り、決して日本の松が入手しやすいために紹介しているのではありません。
いや、むしろ入手しづらいために紹介している、といったほうが正しいくらいです。

それらの樹種は、伐採量も決して多くなく伐採時期も限られ用途も限られてきただけに、近年では非常に稀な存在になりつつあります。
といっても、それらはフローリングや乾燥材の梁桁材として供給されるものが少ないという意味で、昔から使われてきた土木用材や乾燥が不要な用途への利用は、ある程度柔軟に対応できる・・・と思っていました。
その話をきくまで・・・


「えぇ〜、何本くらい?!」

いつものようなはっきりとした「すぐにでもやっとくよ」という軽快な返事が返ってこなかったことが始まりでした。
弊社でも昔は在庫していて当たり前、つい10年ほど前までは年に数回は出荷していた「杭丸太」ですが、もう最近ではそんな言葉を聞くこともなくなって久しく感じますが、何年振りかに「松の!杭丸太が急ぎほしい」との問い合わせをいただきました。

地松杭丸太1


木材というのは(いや、ほかの業種もか・・・)、使わなくなって在庫しなくなると問い合わせのあるもの。
もちろん、みなさん探すようになるからですが、昔はすぐに入手できた杭丸太も目にすることがなくなり、いろいろと探して弊社にたどり着いた模様。
もちろん用意できますが若干お時間をいただきます、とお答えしてから地松専門の製材所に電話した時の答えが、先の言葉です。

私の若いころはしょっちゅう大工さんが松の丸太の皮むきをしていましたし、梁丸太に杭丸太は欠かせないものでしたから、松は普通に入手できるもののはず、でした。
が、もう近辺の松山は伐採していない、というのです。
もちろん、売れないし売れても安いし切らないほうがマシ、だから。

いっつもどこでもそんな話を聞き、自身の記事にもそういったことを書いていたものの、やはり昔から専門で製材されてきたオヤジさんから「地松が貴重品になるでぇ・・・・今度は貴重すぎて(高価になりすぎて)売れへんけど・・・・」という言葉を聞いて、ついに来たか・・・と。
希少価値が高く、競争するほどの人気の高値なら理解できるものの、そのものの費用対効果を考えるとコストに合わないという場合は、いかに貴重でも商売になりえません。
今、地松の杭すらも量をそろえるにはむつかしくなりつつあります。
もちろん、私の周囲だけかもしれません。しかし、小径木でも若木でも利用できる杭丸太というのは、木材製品としての立派な用途の一つで、丸い木を四角い木材にせずそのまますべて利用できる点でとても大切な用途なのですが、それは中径木が出荷されそれとともに出てくるからこそ、それなりの用途に使えるようになるものの、初めから杭にしかできないようでは林業の採算に乗っかりません。

いま、間伐材を使おうとか、伐採期に入った木を活用しようという動きがありますが、補助金等も加味しスギやヒノキの林は伐採するものの、あえて松山は切らないために、松が集まらない状況になっているといいます。

地松杭丸太2


今回は本数が少なかったために在庫で対応できましたが、おやっさんの「えらい時代になってきたでぇ・・・」の言葉に、ものすごく「身近な危機」を感じました。
もちろん、元気に地松を製材し続けているところもあるものの、そういう現実もあるということ。
それがごく近い場所で起こった、それだけのこと。
しかし、使わないものは必要ない、必要ないものはすたれてなくなる。
そんな恐ろしくも単純なサイクルの中に、日本の代表的な樹種の一つである松が含まれていることを改めて残念に思いました。

今回、私がこの杭丸太を受注したのは仕事ではありません。
いや、仕事ですが赤字仕事です。
要は、人件費と運賃を加味すると儲けなどないのです。
会社、商売には儲けが必要です。そこから次のものを生み出していくわけですから、差し引きゼロやマイナスでは当然いけません。
販売すれば赤字、は山から木材にするまでの話と同じ理屈。伐れば赤字、経費が出ないのです。
それでも、販売する気になったのは、冒頭のおやっさんの話を聞いたから。
そして、お客さんの「地松の杭がほしいんです。」という言葉。
きちんと用途を考えて地松指定してもらった気持ちに、断ることできず引き受けたのですが、最終的に「よかったぁ、助かりました。ありがとう。」と言っていただけたのは、やはり木への思いを途切れさせたくなかったから。

山と木材と使う人たちと、立場を並べて話をするのはむつかしいことですが、もう木に関わる誰かが何かが犠牲になる木材販売をなくさないといけません。
真剣に関わり続ける者が苦労するばかりでは、先に向かう力がなくなります。
必要のないものを購入する必要はありません。
しかし、必要な木材を購入するときには、それに見合う対価をかけること。適切な価格で購入するということです。
今購入できる木材は、その昔に誰かがそれに見合う対価を出してくれたことで得られる木材なのかもしれません。
いや、対価ではなくとも育てた人の苦労や自然の時間というものがかけられています。

日本の森を救うとか守るとか、そんなことは軽くは言えませんが使わないことよりも、使うことで守れる部分もあるということ、知ってもらうことで変わるかもしれないことを再度、広く周知する必要があると実感しました。
もちろん、一義的な「間伐材をつかおう」ではなく主伐・択伐もあり間伐もあり、手入れのための伐採もあり、全てを「使える」環境にしようということです。(間伐材=安くして使おう、ではありません。)
これはまた、出張授業してかなきゃ。課題です。
当たり前にある木を当たり前に活用できるようにするために、材木屋がすること・・・たくさんあります。

どうか、活動する材木屋に力を!!

皆さんの購買力で私の木材購買力を倍増させてください。
木材を高価にするのではなく、適切な価格で流通できるようにするために・・・
もっともっと、喜べる木材を普及させて木を森を先の世代ににつなげていくこと。
そのために、材木屋に行動できる活力を、真っ当な対価を!

地松杭丸太3



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