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その理由は 虫つかずと狼よらず 第三部「樒・シキミ」

さぁ、神様の木第三回。

木材にまつわるお話といえば比較的、西洋の神話がクローズアップされる場合が多い(実際、本記事でも多いかも・・・)のですが、今回のシリーズは「神様、仏様の木」なので、前回のように「天照大神」という日本の神話にまつわるお話が出てきます。
もちろん、日本の神話や伝説には木があまり出てこないわけではなく、むしろさまざまな場面ででてくるわけですが、派手さでいえば、やはり西洋の神話の方が印象に残りやすいといえるかもしれません。

しかし、今日のお話の主人公である樒(シキミ)は、ものすご〜く東洋の香りのするストーリーを持った木です。

樒(シキミ) 学名 Illicium anisatum
シキミ科シキミ属の木ですが、以前はモクレン科に分類されていたというちょっと変わった樹種。
そして漢字の樒や梻は双方当て字だということながら、私としてはどちらも密教の「密」や仏(佛)を表すその字をみると、このシリーズを通してつながっている「神仏と関係の深い木」であることをしみじみと感じるため気に入ってはいるのですが・・・
シキミという名は、実が枝に茂くつくことから、若しくは葉の茂みから、というのが語源とされています。
そのほかに、実が有毒であるために「悪しき実」ということから転訛したという話もあります。
前回のサカキに対して、枝条を物価にするのでハナノキやハナシバなど、また葉を抹香や線香にすることからマッコウノキという別名を持っています。

シキミ



また英名は japanese anise-tree といいますが、実は別に使われている学名に Illicium religiosum というものがあるそうですが、やはりその religiosum は「宗教上の」という意味ですし、Illicium はラテン語で「誘惑する」という意味からきているといいますから、シキミからつくられた線香の香りが宗教への誘いになる、という解釈だったのかもしれません。
葉の香りでいうと、ミヤマシキミというミカン科の樹種はその葉に柑橘系の香りがあるといいます。
それはそれで、さわやかだろうと邪推するところですが、今まで出会ったことはありません。

ここで料理に造詣の深い御仁にはわかりきったことかもしれませんが、じつはこのシキミの仲間にはトウシキミがあり、その中国名は「八角」です。

シキミ


そう、料理用スパイスで有名な八角はこの果実がそれです。
無毒なそれは、漢方でも健胃作用で使われるほどなのは、日本の有毒な葉のイメージとは全く異なります。
いや、薬と毒は紙一重というべきなんだろうか・・・

また、現在深刻になっている森林でのシカ植生。
樫やモミ・ツガ林の下木としての植生が本来は多いようですが、現在はシカ植生を示すうちの一つにあるのがシキミだそうで、やはりその毒性からシカも食べずに残っている樹種になっているとのこと。

シカ食害 1


もう少し毒の話をつづけましょう。
シキミに含まれているのは何も有毒なものばかりではなく、初めてシキミから単離することに成功した「シキミ酸 shkimic acid 」という化合物は、アミノ酸を形成するのに非常に重要な役割を果たすそうで、インフルエンザの治療薬の原料になるといいますから、やはり「毒をもって毒を制す」でしょうか。

シキミも古くからの記録に残っている樹種で、万葉集にも登場しますが新古今和歌集などにおいて「サカキの葉には香りがある」とされているものは実はシキミの葉のことで、清浄でその香りが不浄のものを取り払うので、神に供していたものの、仏教渡来後に神仏の相違からシキミは仏前に、サカキは神前にという使い分けになったといわれています。

どちらも神様仏様に備える樹種だったということです。

さて、シキミの木材としての特徴ですが前回のサカキと同じく散孔材で、心材は淡い紅褐色で辺材は黄白色。
その色合いを利用して細工物の色材、こと桃色用の木象嵌材としての利用があるほか彫刻材や薪炭材、意外なところでは蒸して柔らかくして鉛筆にも利用されていたとか・・・
しかしやはり注目されるべきは、その葉。

シキミの葉は、神仏だけではなく人にも関係が深かったようです。
昔はシキミの葉を棺に入れていたそうです。
それは、屍臭を消すためと同時に屍を狼から守るためであったといわれます。
現在はニホンオオカミは見ることができませんが、その存在を気にする生活スタイルだったころから、人の近くにあり、神仏と人の生き死にの間にあった樹種だということでしょう。
やはり、神聖で不浄から守られることを期待する、そんな位置にあるのがおがらから続くサカキとシキミのようです。

最後に、京都愛宕神社は全国800余社の愛宕神社の総本山で、防火鎮火の神様とされています。
そこでヨシとシキミの板を授かりかまどでくべる火伏の習慣があったといいます。
愛宕さんの参詣ルートの一つに「樒道ルート」というのがあります。
それが古くから先の習慣と関連があるのか否か?!、真偽は不明ですがロマンの膨らむところです。

シキミの木語は「猛毒・援助」
良いところばかり見せてはくれないが、助けてくれる存在。それが神仏の木、なのかもしれません。



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