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ワインが遠くから語りかけるこれから・・・の木材


前回の最後に、ワイン誌の表紙の一部を載せていますが、それらの「前によく飲んだなぁ・・・」と懐かしくなるものたちも、やはり価格上昇の波にのまれているものが多くあります。
そんな中でも、人気の集中している銘柄や知名度の高いものの価格上昇は避けられないため、まだ余り知られていないものや、知名度が低いものの中から良いものを探し出す、という特集を組んでくれているのがその表紙の企画です。

ただ単にどれが美味しいか?!という「得点争い」的な特集ではなく、予算と好みに合わせて「安心して」購入することができる銘柄を紹介しているのがポイントで、それをしているには訳がある、と解説がついています。

紙面2


つまりは、人気が集中していない銘柄や注目されにくい等級のものは、比較的価格上昇が緩やかで、無理して知名度を優先するよりもはるかに入手しやすく、しかも価格を気にして購入しないのではなくちゃんと安心して購入できることで、消費がひろがり、ワインのすそ野が広がる効果を期待しています。
それは、大きな目で見ると日本全体のワイン購買力に現れ、日本が買ってくれるんだったら・・・と生産者から仕入れがし易くなる、という構図。
し易くなる、というのは決して安価に叩く仕入れではなく、「入手できるようになる」ということ。
紙面の記事にあるのは、天候不良でワイン生産が少なく収入が伸び悩む農家は、たとえ売価が安くても買ってくれる所へ出荷しないと生活できない、ということや、市場原理というものを考えても、より多く継続的に買ってくれるところには優先して出荷する、ということになるので、「高いから買わない」と敬遠していると、そもそものワイン自体の入荷にも影響してくる、というわけ。

ほおっておいたら、急成長する諸外国や富裕層を多く持つ国にばかりモノが流れてしまうということ。
だから、あまりにも高価なものを追い続けるのではなく、現実的に購入できる中で良いものを探そう、という企画には大いに賛成です。

そしてやっと木材の話ですが、木材やその元となる山でも似たような現象が起こっています。
いや、木材の方がもっと深刻。


木材は今、決して高価なものではありません。
一概に価格について言うことはできませんが、それでも、住宅に限っては高級材を販売する比率は低くなったと感じますし、第一に、高級な木材を指向するというお話もあまり聞きません。
本質的な木材の価値よりも、「外観のカッコよさ」などを希望する面が増えたことも一理由だと思っています。
カッコよさ、とは節を活かすことであったり変った形を活かすことだったり、傷を許容することだったり。
普通は木材として「欠点」とされている部分を「活かす」ものが多いのですが、活かしているはずが、「そういった欠点のある物の方が安いから」という理由で採用されていることは多いはず。

百年2

もちろん、そういった使い方で木材の多様な利用可能性が広がっていくのはとてもいい事だと思います。
だとしても、それらの木材の出荷が多くを占めるだけでは、木材としてはとても厳しい状態になってしまいます。
国の政策やキャンペーンのおかげで、山の整備や「間伐材の利用促進」、バイオマスエネルギーの活用などに焦点が当たる機会が多いですが、これらも俗に言う「低質材」で、良材として使えない部分を利用しようという働きを期待しているもの。
どこかで忘れていませんか?!

欠点材と言われるもの以外の良質材の事、主伐で出てくる良質丸太の事、そしてその優良材のこと。
それらを育む時間と労力の事。

百年3


そこら辺はワインと全く違うところで、ワインでいうグランクリュ(特級)やプルミエクリュ(一級)クラスの出荷が減っている(もしくは丸太などがその価格で売れない)ために、収入源が限られてしまうので、伐採や育てるための費用が捻出しにくくなっていること。
また、ワインと同じで購買力が下がれば原料となる丸太も良質なものを含め、諸外国に優先的に使われるようになるということ。

山や製材所も、大切に育てても売れない、安くしか出荷できないとなると木材として販売することができません。
そしてよく言われている様に、山は手入れされなくなり荒れていき、様々な影響を与えることになる・・・という悪循環です。
もっともよくとりあげられるのはやはり社寺建築。

木材枯渇

山を手入れしない、荒れるということは良い木材が育たないということ。
つまりは資源として良質な木材を生産できなくなり、上の新聞記事の様に必要な木材が自国で調達できなくなります。
いや、もうすでになっているから記事になるんですね。

私も少し使わせてもらっていますが、「森林大国日本」といいますが、優良な木材を生産出来る木はどんどん少なくなっています。
社寺用の桧やケヤキの巨木を始め、広葉樹材全般含めて。
これらは手入れしたから必ず出来るというものでもありませんが、しないと現状は打破しにくいとも考えられます。

時代背景として、多くの森林を失って以来一所懸命植林し、自然林と合わせて豊かな森林国になった日本。
やっと、普通に木材を活用できる時代になったのに、主な木材の利用の多くは合板やチップ、バイオマス・・・そして建築用一般材。
肝心の木材として、優良材を産出しているという話はまだ出てきません。
もちろん、まだ樹齢が若いために大木や木目の良いものは少ないということもあるでしょうが、社寺とまではいかなくても、優良材を産出するにはこれから一層森林を大切にしていく必要があります。

現在進んでいる桧の御堂の加工に使われているものだって、木材にしてみると小さく感じますが、原木の樹齢は100年以上。
人間だって、100年生きようと思うとどれだけの費用がかかるか?!
木も生きています。100年生き木材としての価値を上げようと思うと、相当の費用が必要です。
しかしそれは、木材になると目に見えないもの。
そして、100年という時間はお金では買えません。
100年の樹齢には、100年という時間が必要です。それも実際目に見えない、お金に代えられないものです。

百年


現在の木材価格には、それらの「木材にかかる目に見えない費用」が殆ど加味されていません。
もちろん、木材商売ですから安く仕入れる方がいいというものですが、それでは今この時だけで終わってしまい、継続していくことは不可能です。
山を維持できないと木材も維持できない、木材が無いと商売できないわけですから・・・

もう実際に、「こんな価格なら伐採しない方がまし」という話や、ワインの出荷と同じように「良質材で売れ残るより、補助金のつく低質材と一緒に売りきってしまおう」ということも聞きます。

そのうち、御堂すらできなくなる?とまでは言いませんが、必要となる桧の乾燥材がすぐに入手できず、1年や2年というスパンで木材になるのを待たないといけないということが起こるかも?!しれません。

木材を使うみんなの意識に、木材が生まれるために必要になる費用の事もしっかりと入れてもらいたい。
そうでなければ、本当に続いていかない気がします。

その為に私は木材の価値についてお話し、ショールームで木のストーリーを語り、山へ向かうツアーを催し、少しでも意識改革をしたいのです。
人の手で丁寧に時間をかけて育ってきた木材、満足できる形で使ってもらうためにも意識改革しないといけません。


ワインも木材も、しっかりと購買意欲を持って使っていかないと、どちらも入手がしにくくなります。
両方好きな私にはたまらない問題。

今ワインを語るのと同じく、私が木を語るには訳があるのです・・・・



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