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ウィスキー5年、木材50年 


先日の朝の新聞に、売れ行きが非常に好調なのに会社としては困ってしまう、旨の記事を見ました。

悩ましい生産量


こんな時代に売れて困るなんて、なんて贅沢な悩み!!と思っていましたが、実際はそうではなく、木材と共通の「今すぐ対処できない悩み」がある事を再確認しました。
それはウィスキーの生産。

サントリーホールディングス(以下サントリー)の鳥井副社長曰く、この7〜8年、世界的にウィスキーブームでバーボンもスコッチも非常に好調の一方、原酒不足が課題になっている、との事。

お酒好きな方はすぐにわかると思いますが、ウィスキーやバーボンというような蒸留酒は、人の手で生産してすぐに出荷できるというわけではなく、出来上がった原酒を樽に入れて貯蔵熟成させる、という手順を踏まなければなりません。

その為に、販売好調になり出荷量が増えると、在庫している量が少なくなってくるわけですが、熟成が終わっている貯蔵量には限りがあるために、それを出荷しきってしまうと増産しようとしても、増産分を出荷できるのは最低でも4〜5年先、ということになる。
それでは、ブランクが空きすぎてその時の需要がそこまで続いているかはわからない。
一時期の日本酒ブームやワインブーム、焼酎ブームなどの様に、もし蒸留酒ブームがその時に続いていなければ、過多な在庫を持つことになり、会社としての負担が大きくなることはすぐに理解できる。

売れているときは在庫不足、売れなくなると余るということの繰り返し。
オンタイムで生産、出荷ができる様な商品ではないために、常にそんなリスクを持ちながらの生産になっているために事態の解消法は無い、と書かれている。

やっぱり、木材と似ている。

「国産材」が奨励され、ポイント付与制度などが始まると一気に需要が高まり品不足、要望に応じなんとか生産量を増やして対応出来る頃にはポイント付与終了、若しくは国産材のくくりが無くなって一気にその需要が無くなり、頑張って生産したところはいつ出荷出来るともわからない多量の在庫が残った、という現実をはっきりと体験していますので、苦悩は我が身の様にわかる・・・つもり。

丸太

ウィスキーは最低5年ほどの熟成期間が必要であれば、木材の方は木材として利用できようになるまでにおよそ50年。(用途にもよるが・・・)
単なる時間の長さではなく、同じく自然の育むものとして今現在急激に膨らむ需要やブームには対応しきれない、ということです。
「戦後に植えた植林材が伐採期に入っている」と言われますが、様々な事情はあるにせよ、やはり木材として利用できるものを増産せねばならなかったという背景があることは間違いなく、相当の需要を見越して植え育てていたもの。
それが現在、賛否両論?!の「安価な輸入材」に押されているとかなんとかを理由に、需要が伸びず「在庫過多」の状態と言われています。

森

ウィスキーの苦悩とおんなじやん。
いや、ウィスキーはある程度の熟成期間で、それに応じた価格で販売できると思います(7年物、12年物など)が、現在の木材事情は熟成=高齢木でもそれに応じた価格がつきにくく(もちろんつくものもある)、時間と手間をかけて育てた「在庫」の価値が評価されないという苦悩も抱えています。

どんなものでも、在庫をし管理していくということの大変さは相当なもの。
それも、出荷を期待して大切にして来たものが出荷時期に売れないというしんどさは、なかなか伝わらないかもしれません。
その為にも、やはり木の成長やかかる時間、そしてそれに対する価値観というものを、お客様と共有しなければならないと思っています。
育った山を見る、搬出の苦労を聞く、製材の工夫と木材が生まれる瞬間を体験し、「製造」されるのではない、ということの理解を深めてもらう。
そして、愛着を持って使ってもらうこと。
大切だと思います。

稀にその年度分の生産が終了し、ご要望に答える事ができない無垢フローリングの場合も同じこと。
入荷量も限られ自然の産物ですので、早く作ってくれ!、ということは無理なのですが、多くのものが欲しいと思った時に入手できるようになった世の中では、「時間がかかること」を許容しにくくなっている様にも思います。
樹木が無垢のフローリングになるまで最低50〜70年、比較的成長の早い杉でも弊社の古希杉浮造りフローリングは70年以上。
そして70年経ったものが住宅の一部として、また一から歴史を刻み始めるのです。
ウィスキーなどの樽になるオーク材も、樽用の木材になるまでおよそ100年近くかかると言われています。
それは樽に使える状態の木材を製材するための寸法になる年月分と、木の太さ一杯が全て材料になるのではなく、辺材は利用できないために、丸太の径から想像するよりもかなり小さな材しか伐り出すことができないためです。

蒸留酒


ウィスキーも木材も、その状態になるまで多くの時間と労力を要しているということを、「商品」になったものから想いを馳せることができればいいなぁ、と切に感じます。
そして、双方とも愛着を持ち楽しみ愛でるもの。
やはり最終的な心の部分も通じているのは、自然のもたらすものに共通だからなのでしょうね・・・


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