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その存在は何を物語る?! 〜川上村 歴史の証人の森〜


いつも様々な樹種や大きさ、姿かたちの巨樹巨木を紹介していますが今回は、少しいつもとは違います。
いつも訪れているのは、たいていが天然林の中の巨木や社寺にある巨樹などですが、今回は「人が植えた巨木」です。
つまりは「人工林」だということです。

その言葉を聞くと、どうしても天然林と比べて劣る様なイメージを持つかもしれませんが、ここは違うのです。
その場所は日本の林業の歴史においては必ずと言っていいほど登場する「川上村」。
いわゆる「吉野」です。
その吉野地方の山の中に、まさしく歴史を物語る巨木が存在します。

豊かな水を蓄えるダム沿いに通る車道を離れて山中の道を登った途中に車を停め、目的地の場所へ30分ほど森の中をトレッキング。

歴史の証人1

さすがに30分も歩くとなると、全く位置がわからない状態で森の中を行くことができませんので、今回は一人ではなく案内をしてもらいながらの道中。
様々な森の形態を見ながら登っていくと、あるところで景色の色が少し変るところに出ます。
山中に看板が立てられているためにすぐに気がつきます。
景色が変るのは、鬱蒼と茂っておらず頭上が開けている上に、一つ一つの木々の間隔がかなり広い為に、森の中というよりもむしろ「広場に大きな木がたくさん生えている」と言った感覚に近いと感じるほど、感覚的に森の様子が変ります。

その場所こそ、日本で最古の人工林と考えられる「歴史の証人の森」です。

歴史の証人10

ココに立つと、冒頭の「人工林」という言葉が示す意味を再度問われる様な気分になります。
言葉のイメージがあることも否めませんが、どうしても天然林との比較対象の言葉のように感じるのは材木屋である私だけではないと思うのですが、そういった概念で見る意識が無くなる、そんなところです。


そもそも日本の人工林の歴史は、今から500年ほど前に川上郡で杉の植林が始まったのが最初ではないかと言われているようです。
それも、ただ単に植えるというのではなく「密植・多間伐・長伐期」というゴロの良い組み合わせで言い表される代表的な方法によって、通直で年輪が細かく揃っていて丸太の切り口の両端の太さの違いが殆ど無い、という手をかけた人工林だからこそ出来る特徴を持った良質の原木を生産出来る植林を行ってきた、それをしめすのがこの場所。

川上村の事やその林業のことは、下の動画で見れば一目瞭然なのでそちらに譲りましょう。


 

そんな歴史ある林業の地で、樹齢400年とも言われる巨木「歴史の証人」が残っていることは必然だったのか偶然なのか・・・
現在は展望デッキも整備されて、あたりを見渡しながらくつろぐことができる様なスペースになっていますが、400年前は、いや、100年前はどんな森だったのだろうかと想像するだけでもその名の通り「歴史」を垣間見る様な気分になります。

歴史の証人5


鳥取県は智頭にも「慶長杉」なる樹齢300年以上400年とも言われる人工林の杉があるそうですが、町の資料によると吉野等の林業技術を参考にし、人工林を形成した様な記述があるため、やはり川上村が最古なんでしょうね。

そして、そこにそびえる「歴史の証人」なる巨木は、川上村によると、胸高直径164cm高さ50mとされていますので、人が植えたとは思えない十分な巨木です。

歴史の証人6


それに、杉の巨樹はまっすぐに伸びるものもあれば、巨樹として有名な物の殆どが触手を広げた様な異形を成していたり、猛烈に幹分かれ、若しくは合体木だったりするのですが、歴史の証人は流石の佇まい。
本当に「天を射抜くかのように」屹立しています。
これこそ、通直で完満(木の径の太さの差が少ない)なお手本の様なものです。

それに、あたりが開けていることもあり、普通に納まっている写真ではその大きさがわかりにくいのですが、そばに立つとこの大きさです。

歴史の証人3

またこの森がすごいのは、その一本のみが大きいのではなくその廻りの木々も十分に大きいということ。
先の川上村の動画にもある様に、杉だけではなく近年樹齢100年を超す桧が少なくなってきた、と言われる中でも200年以上の桧も残る川上村。
天然林とか人工林という言葉だけでは語れない森のことや、森と人が関わってきた歴史、そして森が生み出してきた恩恵やその後の現状、そしてそれと照らし合わせた現在の木材業界、そして木や森だけではない土や空や水と私たちの関係。
川上村に来ると、いろんなことを考えます。

歴史の証人8


もし、この歴史の証人を木材として購入したいのなら、巨額の富で可能になるのかもしれません。
しかしそれは、400年も前からずっと先人達が林業に、森に関わり続け守ってきたからこそできるかもしれない話。
今すぐに400年生の木材を作れ、と言われてもできない、それが時間というお金では測れない尺度と絶え間ない、人と森との関わりの中で生まれてくる自然の産物である木材というものの価値を、改めて教えてくれる物ではないかと思います。
それが歴史の証人のメッセージの一つかもしれません。

歴史の証人7


たまに尋ねられる、1000年以上という時間を経て出てくる神代木や、数百年という樹齢を重ねた木材でも、「え?そんなにする(高価な)んですか?!」と価格に驚かれることがありますが、それらの木材が歴史の証人の様な立木の状態で出会ったとしたら、と想像してみてください。
決して驚くほどの価格ではないはずだと思います。
また、そこにあるからお金という対価で入手できますが、1000年前という時間や400年という年輪は今お金で生みだすということはできません。

素晴らしい巨木を見てお金の話というのもおかしなものですが、それ位に木々が育ってきた環境や時間に対しての想いを深めてほしい、ということです。

歴史の証人9


証人には失礼ながら、木材という物差しで話をさせてもらいましたが、人が関わった時間というものを確実に教えてくれる存在であるそれは、ただ偶然そこにあるのではなく、やはり、見るものに何かを伝える存在として残るべくして残っている、生きた証人なんですね。

そばに来てその樹皮に触れて想いにふけるもよし、デッキに腰掛けてその巨木の空気に包まれ自分の時間のリセットをするもよし、人が維持してきた森がもたらしてくれる恩恵を感じられる森として、これからも多くの人を導いてくれるであろう歴史の証人との出会いでした。

歴史の証人4


歴史の証人所在地

奈良県吉野郡川上村下多古 山中

車で入れるところは駐車出来ますが、正確な位置を示すものがないので案内をしてもらえる土地の方に同行してもらいましょう。


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コメント
1. Posted by 三浦妃己郎   2015年10月18日 09:11
5 私もここに行きました。再度訪れるつもりで探していたら貴殿のブログに行き当たりました。若い方が木に興味を持って活動されているのは、本当に励みになります。ホームページからもこのブログにはアクセスできるのでしょうか。今後のご活躍もお祈りしています。
2. Posted by muku-mokuzai   2015年10月19日 13:05
三浦さま

コメント頂戴しありがとうございます。
自身が訪れてからも再度、一般の方を集めて木材の産地ツアーの一環として、訪問しています。木と一言でいってもとても大きな自然の産物ですので、とても十分に説明できませんので、このような存在を知ってもらうことはとても有意義であると思っています。
ホームページからは、ブログの最新記事がいくつか表示されているだけですので、巨樹関係はブログの「巨樹古木をたずねる」から見ていただけるとありがたいです。
ホームページの巨樹のマップには、まだこの木は登録していません。そのうちに出したいと考えています。
これからもよろしくお願いします。
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