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別名多き名付け親と和製オリーブオイル 百面相ホルトノキ番外編


木材や樹木の話を始めると、どうしても派生してお伝えしたい事や本文が異様に長くなってしまうことがあったり、終わるつもりが思い出したことを書き足したくても文脈が定まらず、別段として次回に持ち越すことは多々あります。
毎日更新していないのだから、できる限りその回で完結させる様にはしている(最初から区切った方がいいものは別として)つもりですが、今回も少しスケールオーバーで、仕方なくもう一人の主役も引っ張りだして前回のホルトノキの補足を行いたいと思います。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 2


補足、いや、実はこちらを先にお話するべきであろうということは容易に想像がつきます。
ホルトノキという耳慣れない樹木の事を、少しでも予備知識として頭に放り込んでから、前回の千草のホルトノキを見てもらえば良かったものの、ちょっと先走ってしまった感は否めません。
まぁいいです。
お金をとる書籍であるまいし、ましてや私の木材&巨木馬鹿っぷリを承知で見ていただくマニアックな方しか読者はいないと勝手に想像してお届けしているんですから、大丈夫の筈・・・

それでは、本題。
和名 ホルトノキ
別名 モガシ、その他(後述します。)
学名 Elaeocarpus sylvestris
この属の英名を oil fruit tree 又 pigeon plum

ホルトノキ科の植物で、千葉県以西の本州、四国、九州、沖縄に分布し、台湾や中国、インドシナにも同科の仲間のある常緑高木で、暖地の雑木林に生えている場合が多いといいます。
今回の様に大木が見られるのは佐賀県、高知県、香川県、静岡県にそれぞれ知られていますが、同じ県内でほど近い場所に2本他存在するというのは、やはり島国「ホルトアワジシマ」だからこそではないかと思います。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 5


もともと、淡路島(兵庫県)においては、今回紹介する鳥飼八幡宮のホルトノキが最大とされていて、樹齢600年、幹回り4.24m、樹高25mというスケールでずんぐりむっくりのスタイルの足元は、根周り8.2mという重みのある巨体で、珍しく感じる方が多かったのでしょう。
前回の千草のホルトノキは、ムキムキの腕っ節ながらもとっても紳士的ゆえに、表舞台には出てこなかったのでしょうね。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 9

ホルトノキの果実は食用となり、樹皮や葉は染料として大島紬の鼠色系統の染色につかわれているそうですが、材としては耐朽保存性は低く割れやすいため、薪用材や建築雑用材にするという用途が記載されていますが殊、しいたけの榾木には良材とされているそうで、通常は庭木として存在している場合が殆どなので、これらの様な巨樹にはなかなか出合えないはずです。

そしてここで聞き慣れない名前、ホルトノキの名称についてのお話に移りましょう。
前回のお話の締めに、私がしょうもないシャレを残した事に嘲笑したそこのあなた!まだまだ木材に対する愛情が足りないようですね、フフフ。
変った名前、「ホルトノキ」の由来というのは「ポルトガルの木」からきているのです!!信じられない様な本当のお話・・・私の面白くないシャレではなかったのですよ。
ホルトノキの由来については、かの有名な平賀源内の物類品隲から始まります。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 4


当時、ポルトガルの油と言えばオリーブ油の事を指すほどに有名な時代。
源内は紀州にて見た方言「ズクノキ」(現在のホルトノキの和歌山での呼び名)の実が、本場のオリーブの実と同じと考え、さらには紅毛人に問いかけ「真物」という回答を得たのでこの木はポルトガルの木、すなわちオリーブであるとしたことに始まる。
しかしながらもちろんそれは別物であったのだが、それ以来一般的な名称として現在までホルトノキが用いられているという、真面目な間違いから発生した植物名がホルトノキの名称の正体。
平賀源内、エレキテル他で名をはせたのだと思っていたけれども、植物の命名まで首を突っ込んでいたとは意外や意外。
やはり一般人とは見ているところが違ったのでしょうね。

思いこみはやはり強く、ホルトノキからオリーブと同じように油が取れるということを信じていたそうです。
現在でも、源内が紀州から持参した種・苗から育ったと思われる大木が高松、栗林公園にあるといいます。

そんな由来を持つホルトノキは、怪人百面相ならぬ怪木百面相でもあります。
なぜかというと、やはりその名称に理由があります。
木材には別名や方言名、通称名や外国名など様々ある場合が多いですが、このホルトノキほど地方地方によって呼び名の異なる木も珍しいように思います。
まるで、その地ごとに名前を変えて忍びこむ怪盗の様・・・
一般的な別名の「モガシ」の他に先の和歌山では「ズクノキ、ツギノキ」、御蔵島の「アカツグ」、鹿児島の「クロツグ」、奄美大島の「ナリツグ・ツンギイ」など、ズクの意味は不明だそうですが、ツグはシュロの琉球方言で、ホルトノキの果実をシュロノ果実になぞらえたものだといいます。

その他も激しく多い地方名が存在し、九州「シラキ」、山口の「ミズノキ」、高知の「ミツガシロ」、大分の「イヌヤマモモ」、西表島の「ビーマツマヤ」などなど・・・・
この中で少し想像できるのは、ヤマモモに葉の形が似ている事からと推測される大分位です。
その他は、なんじゃそりゃ、です。

こんな百面相的なキャラは、名前の由来となっている平賀源内に通じます。彼も様々な別名を使い分けていたといいますから、似たものどうしなの?!
しかしながら、庭木にしろ雑木林の中にしろ、これだけの別名地方名を持っているということは、それだけ地方で愛されてきた証拠ではなかろうか?!

鳥飼八幡宮のホルトノキ 6


巨樹の記事で、その木の材質の事についてはあまり触れたくはないのですが、最後に材についてもう少し。
木材としてのホルトノキは、比重が0.57で中庸な重さを示す散孔材で、黄白色から淡黄色の材面を持っていますが、先の様に何かの用途に賞用されるというほどの知名度も供給量もありません。

せめて、シャレではない変った名前と変った風体を見て、平賀源内が勘違いした背景を想像してみてください。

鳥飼八幡宮の隣は鳥飼小学校です。
その境界の柵を越え、太い二の腕を伸ばすまるで「四股をふむ力士の様」な風貌は、この土地の守り神なのでしょう。
太いながらもやさしく手を差し伸べているようで、少し可愛く感じますね。
きっとこれからも子供たちとその風土を見守ってくれることでしょう。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 7


鳥飼八幡宮のホルトノキ所在地

兵庫県洲本市五色町鳥飼中317−2
周りを見られなかったのですが、道路に駐車してもホルトノキはすぐそばです。

 鳥飼八幡宮のホルトノキ 1


ホルトノキより石段を登り、鳥飼八幡宮境内の門をくぐるとすぐ右手に見事にねじれたイブキもあります。
そのひねくれ様は、個性的こそ生き残り!と言わんばかりの迫力です。一カ所で二度美味しい鳥飼八幡宮です。

鳥飼八幡宮のホルトノキ 8



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