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ヒノキの柱はいつまでもつのか? 腐朽材の教えてくれること 〜木材腐朽について〜


つい先日、弊社の敷地内の電柱を取り換える作業をいたしました。

電柱と言っても街中で見かけるような、コンクリート製の丸い棒状のものではなく材木屋ですからもちろんヒノキの木製です。

取り替えた柱3

そんなに高さが必要無いことや社内用なので多くの架線が無い為に、自社材利用をしているのですが、長年使っているとやはり老朽化してくるのはどの素材でも同じこと。
よく風雨の影響を受ける柱上部から1mほどは腐朽が進んで四角だった木材の角の部分が丸く風化しています。
風化という、日光や雨風の影響で劣化するのはリグニンという成分の分解が生じるからですが、難しく言うと、光によって劣化した部分が雨水によって浸食され木材の成分が溶脱し、表層部が崩壊していくことです。
風化はヒノキやスギなどの針葉樹で、100年に5〜6mmと言われていますが、今回は一日中日が当らない北側の影だったこともあり、相当厳しい環境だったのかもしれません。
指で触ってもボロっと取れてしまうような状態。

取り替えた柱2


それより下の部分は、変色して表面にはひび割れや汚れは多いものの四角の柱の原型をとどめていましたが、最も下の土に接する部分が取り換え時期を物語っていました。

取り換えのサインはこうです。

取り替えた柱1


木製電柱として立ち続けた足元です。
見事にボロボロです。
そりゃ20年は使っていますから、当たり前のことです。殆ど木質部が無くなっているので、立っているのがやっとの状態。
大きく力がかからなくてよかったのですが、ここまで来ると木材としては全く使い物にならなくなっている、と思ってしまいませんか?!
それは大きな間違いです。
ここに、木材はメンテナンスをして使用場所に気を使ってやれば、長期の使用に耐える優れた材料であると言われる理由があります。

普通、長期使用に耐える、となると全く手をかけずにずっと同じ質を維持し続けることを思い浮かべがちですが、木材の場合はそれは無理です。いや、他の材料でも微妙に変化しているけれども、木材は使用環境によってはその変化が顕著に現れるから難しい、ということです。

ご存知の通り、木材は割れますしヤケて色調が変化しますし、腐朽の心配もあります。
しかし、これらをうまくコントロールすれば「ずっと変わらないこと」は無理でも、変化しながら永く使い続けることは可能です。
それを、今回の木製電柱が私に示してくれています。

外観はすっかりと古びて汚れて、部分的に普及が進みくたびれていますので、木材としては寿命が過ぎている様に感じてしまいますが、全くそうではないのです。
撤去の後、電柱を運搬の為に切断してみた部分を見てください。

取り替えた柱4


冒頭の腐れていた足元の写真が嘘のように、四辺の風雨にさらされていた部分はすっかり変色していても、そのすぐ下には新品と変わらない状態が隠れているのです。
これが、古びたヒノキでも一削りすれば香り立つ、と言われる理由です。

近年、大阪木材仲買会館の様に中規模の施設や商業建築、事務所など以前ではコンクリート造であった建物を、木造で建築する物件が見られるようになりましたが、そこで言われる「耐火性能を確保するための燃え代設計」(表面の木材を炭化させて、延焼が広がるのを防ぐ為の寸法をとる考え方)というものがありますが、木材は表面が劣化したとしてもすぐに内部の組織構造に影響するわけではないので、表面の劣化を見越して材料の寸法を大きく設計してやるか、表面の劣化を出来るだけ遅くしてやれば、木材の中心まで使えなくなるということはまず考えなくてもよくなります。

ただし、屋外で木材を使う場合の一番の問題は、木材を接地させて使用することです。
冒頭の写真はずっと地中に埋没させていた部分が腐朽してしまっていました。
つまり、劣化は表面から進みますが、接地させている場合は劣化の進行が早くて、雨や風の影響よりも腐朽菌やシロアリなどの虫害の影響を大きく受ける為に、劣化が大きく「木材はすぐ腐るからだめだ」という結論になりがちなのだと思います。
冒頭の写真を見ると私も同感してしまいそうですが、鉄だって腐食するんです。鉄のパイプであっても、接地させておけば木材と同じことです。

だから木材を使ううえでは、できる限り直に接地させないこと。そして庇や屋根で出来る限り雨風のあたりを少なくしてやること(屋外の柱の上部を銅板で囲うなどでも効果はあります。)、無塗装ではなく塗装をして表面の劣化を促進する紫外線から守ってやること、汚れを取るメンテナンスをすることなどの工夫をすれば、この電柱の様に相当永い間使っていくことが出来るはずです。

一般木材と社寺建築を比べる事に余り意味が無いとは思いますが、社寺が永くその姿をとどめているのはメンテナンスを施されているからですし、できる限り長持ちする様な作りになっていたり、若しくは腐朽や傷みの進むであろう屋根の部材である「垂木(たるき)」などは、傷んだ先の部分を切断しても屋根の下に余分に伸ばしてある部分を押しだすことで、解体して取り替えることなく使い続けられるメンテナンス方法を考えて造られているそうです。
それは、木が劣化することを想定して、それに備えようとしておかないとできない手法です。
ちゃんと劣化した場合の事を考え、それでも永く使えるようにと配慮しているんですね。
社寺だから採る方法かもしれませんが、昔から木材を使う場合は劣化を想定されていたという一つのいい例えだと思います。

今回のヒノキの柱材は、日頃目につきにくい部分だったこともありメンテナンスする機会無くここまで頑張ってくれました。
そして、屋外使用の木材がどの様になるかという実例と、使い方による劣化のスピードの違いを如実に教えてくれました。

屋外に木材を使用する場合には、ある程度の耐久性の目安というものが必要ですが、お客様の「どれくらいもちますか?!」の質問にはなかなか答えにくいもの。
使用環境や今回の様に接地の有無などに影響するからなおさらですが、少なくとも、表面の劣化が大きいものでも全く使えなくなるものではないことは、みてとれたと思います。

以前の記事にて書いていますが、木材を様々な劣化現象から少しでも防いでいく手段を知っていれば、樹種による違いはあるにせよ、永い間木材の良さを味わっていけるようになると思います。
木材は使う人と同じく時間をかけて変化していく材料です。
いつでも見る事が出来るわけでもない、その変化を知ってもらうことでより木材に愛着を持っていただけるように思います。
これもヒノキの柱が教えてくれたこと・・・


次回は、今回の記事の整理で思い出した「腐朽に関する菌 カビ」についてちょっととりあげてみようと思います。
木材から学ぶ腐朽、耐朽性コラム番外編お楽しみに。


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