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干支は違えど猿の出番だ 〜揺らめく猿の毛皮 モンキーポッド〜


今年の干支は午(うま)ですが、弊社の記事では前回に引き続きお猿さんの出番です。

一時はかなり有名になったので、材木屋さんではモンキーポッドの名前を聞いた事があるという方が多いかもしれません。
しかしながら材木屋か否かを関係無しに知られているのは、やはり定番の「この木なんの木、きになる木」を避けては通れません。
殆どの年代の方は、特徴的なリズムを聴くこと無しにふとメロディーが頭に浮かんでくるこの歌。
この歌で主に「この木なんの木」として映されてきたのがモンキーポッドです。

ハワイにて


印象深く枝ぶりを広げ見事な傘状の樹形を形成するこの木は、日本人にはあまりにも有名です。
実際コマーシャルメッセージに使われていたモンキーポッドは、オアフ島のモアルアナ・ガーデンパークにある樹齢約120年、枝幅40mの木であったそうです。
そのコマーシャルを見ていると、広い平原にただ一本雄大に佇んでいる様な印象を受けますが、実際は周りにも幾本も立ち並んでいることから、人が一つの映像から受け取るイメージというのは凄い影響力があるもんだと感心してしまいます。

また、そのメロディーの歌詞の中に「見たこともない木ですから・・・」という行がありますが、確かに日本に自生する木の中ではあそこまで大きく枝ぶりを広げる樹種も、歌詞通り見たことがないですから、その独特のメロディーとともに樹形のイメージが日本人の目に焼き付いたのではなかろうかと思います。
確かに、あの大きく枝を広げた木陰に入ると、どこか大きなものに守られている様な安心感があったように思います。

モンキーポッド monkey pod(主にフィリピンから) または rain tree(英名)
学名を samnea saman

モンキーポッド 3


熱帯、アジアなどで主流の多くの樹種を仲間に持つマメ科の樹木で、ハワイ、西インド諸島、東南アジアなどに広く分布しているのですが、やはりコマーシャルの影響か、私もハワイ原産か少なくとも自生している種だと思っていたのですが、実は原産地は熱帯アメリカだそうです。

モンキーポッドは、ユーカリやアカシアなどと同じく早生樹で、中南米を中心に造林もされているのですが、一部ではその成長の早さゆえに侵略的外来種と位置付けられているところもあると聞きます。
いつもながら、人間が植えておきながら勝手なもんです。
それでも、産地ではお土産物屋さんにある器や細工物の材料、家具や彫刻材としても使われて、ハワイの楽器で有名なウクレレの材料として賞用されていた「ハワイアンコア」の代用材としても使われるというほど、身近な木材です。

モンキーポッド 2


そして、その大きさから仲間というには想像しづらいですが、モンキーポッドは日本でいうネムノキ属の仲間に当たるそうです。
それは特徴である「眠る動作」に共通性を見ることができるといいます。

ネムノキは、簡単にいうと葉っぱの部分には細胞内の水分を出し入れして伸縮する運動細胞があり、夜になると運動細胞から水分が排出されて膨圧が低下する。すると向かい合う小さい葉っぱ同士が折りたたまれ、葉の根元もお辞儀をするように垂れ下がってしまう。これを就眠運動といって、まさしく眠るように閉じていきます。
そして朝になると運動細胞が再び吸水し膨圧が高まり葉が開く。

まったく不思議なものです。

ネムノキの和名は、この就眠運動を眠りに見立てて眠りの木を意味する「ねぶのき、ねむのき」というところからきているといわれています。
そこから、モンキーポッドの別名をアメリカネムノキと称されることもあるといいます。

傘を開いたように広がる見事な樹形は、まさしく雨をしのげそうですが、英名の rain tree の由来は雨が降る前にも葉が閉じる頃に由来するとも、またその樹液を目当てに集まる蝉の仲間の分泌液が雨の様に滴る事から来るとも言われているそうです。
あの広い木陰でゆっくりと過ごしたいもんですが、さすがに分泌物の雨は勘弁してもらいたいですね。


どうしてもその特徴的な樹形を写真に収めようと遠目で撮影すると、背が低く、枝張りだけが大きく感じてしまいがちですが、実際のところは今回のテーブル加工した材のように、1mを超すほどの直径の板材を楽に産出できるほどの幹回りの持ち主です。

天板材 4

しかしながらその樹形を想像してもわかる様に、長尺材はなかなか見かけません。
枝ぶりは大きくなるものの、樹高はそう高くはならない性質上、見かけるものは殆どが3m強の長さです。
とはいえ、それ位あればどうにでも活躍の場はあるものなので、心配は御無用。

一昔前までは特徴的な木目がないと言われているからか、丸太の輪切り座卓などでの用途がほとんどだったものが、大径木を産出できる樹種がだんだんと少なくなってくる近年において、やっと板材として注目されるようになってきたのかもしれません。

天板材 5


材質としては、乾燥中の狂いが少なく工作性・接着性共に問題無く(逆目には注意)、摩耗にも耐えるという事で木材として利用する上でこれと言って欠点の無い優秀な樹種だと思います。
もちろん、産地が広範囲にわたるため、材質や材色の差を含む産地ごとの違いは大きくでるとは思いますが、実際、今回のモンキーポッドは弊社にやってきたのはかれこれ9年ほど前ですが、今日までの乾燥期間の間も大きな捩れや割れもなく、とても素直に育ってくれました。

仕上げた材面は茶褐色からチョコレートの様な濃い茶色の芯材と、柾目面に出る筋状の縞の様な模様は、その名の通りモンキーの毛皮の様で、美しいものです。
ただし、若干の小割れがはいるのは材に関係なくあることなので、寛容に受け止めてください。

天板加工後 4

先に書いたように、早生木であることから若木は軽くやわらかいことと生材での含水率が高い事に注意をすれば、とても用途の広い樹種に違いありません。

しかしながら、弊社に来た仲間たちのもっとも大きな部分では幅1200mmほどになり、幅広テーブルを加工する機械に通すことのできる最大幅を超えそうな位のサイズを誇りますから、さすがにそのまま住宅のテーブル、というよりは店舗などに使われることの方が多いのかも知れませんね。

モンキーポッド 4

一体何人座れるんでしょうか。

一般的に熱帯産の樹種でこの大きさでしかもこれほど濃い色合いの木材になると、かなり重硬で持って運ぶということは困難なものも多いのですが、このモンキーポッドは比重が0.53〜0.61というデータが示す通り、濃い芯材を持つ大径木ですが、写真ほどの大きさになっても大人二人でかかえることが出来るくらいですから、搬入もすこぶる助かります。(と言ってももちろん重いですが・・・)


産地ではこのモンキーポッドの広い木陰でゆっくりとした時間を過ごしたり、はたまた団欒したりという光景が見られるそうです。
気持ちよさそうですね。

最後に、猿は山の賢者と言われ山の神様の使いと信じられていました。

そういえば、「猩猩」と言われるも中国の伝説上の動物も、映画「もののけ姫」では人間に近いと言われるオランウータンなどに似た姿で、シシ神の森に木を植える者として登場します。
映画ではもののけ姫や人間と対立する存在のように描かれていますが、伝説では人間の言葉を理解し、酒を好み舞い踊るといいます。

モンキーポッドの縞を思わせるような材はまさしく、その踊る猿「猩猩」のような木肌に思えてきます。

モンキーポッドの材をご自宅に迎え入れる際には、見事なつやのある木肌に惚れ込み、晩酌がすすみすぎて踊りだすことのなきようくれぐれもご注意を・・・


モンキーポッド 1




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