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旺盛だからこそ衰退させられるプラタナス

 

2回に分けて続けてきた樹種シリーズですが、今回3回目はシカモアと呼ばれるばかりに誤解を生みやすい樹種のプラタナスについて、もう少し話を続けたいと思います。

プラタナス 6


その名前とシカモアという呼び名との関係は前回紹介した通りですが、日本語にあたる「スズカケノキ」は「篠懸」とかいてスズカケと読みます。中国名も「懸鈴木」というそうですから、これは大きな違いはなさそうです。

英語名を sycamore,button wood,plane-tree, などといいますが、plane-tree は platanus (ラテン語)から来ていて、そのもとはギリシャ語の「大きな葉」がもとになっているそうです。実物を見てみれば、カエデに似てはいるものも、サイズの二回りほど大きな葉っぱに気が付くでしょう。
また lace wood と言う呼び方もされているそうですが、これは縮み杢などを持つ他の樹種にも使用されている名称ですので、前々回の記事の写真にあるプラタナスの斑模様からついたものではないかと想像しています。

プラタナス 7

また、前後しますがスズカケの名は、秋にできる集合果が山伏の着る篠懸の衣の房(梵天房)の形に似ているところからきているそうです。

そういえば、フサフサの球体はまさしくそのイメージ通り。人も植物も名前というのはユニークで面白いものですね。

ヨーロッパをはじめ、インドや北米、メキシコにまで広がっているらしいこの属の木は、6〜8種だと言われています。病虫害に強く大気汚染にも強く、さらに幾度の刈込にも耐えることから、街路樹に求められる資質を完全に備えたと思しきその性質。世界四大街路樹の一つ、と言われているほど、世界中で知られた定番中の定番だと言われます。因みに他はニレ、ボダイジュ、マロニエ(セイヨウトチノキ)だそうです。

プラタナス 5

そこへもってきて成長が早い樹種なので、整備したての道路際などにも早いうちからなじむことと、少々の空気環境でも育つことで、枯れたりする心配はなかったわけです。

大気汚染でいえば、1952年のロンドンスモッグ事件という1万人以上が死亡したといわれるときでも、プラタナス(モミジバスズカケノキ)は生き残ったと言われていますから、そのタフさは推して知るべし。

早くから葉を茂らせて木陰を提供してくれるその木は、古くから神話にも多く登場しています。ゼウスと女神たちが関係するお話や水と関係の深いお話に多く登場して、木の陰で広がる物語に華を添えています。
また、古代からプラタナスの木の下で医学や哲学を論じていたと言われ、今でも医学部のキャンパスなどではプラタナスが植えられていることが多いそうですが、果たして、この話を知ってのことか否か・・・・医学部の方、キャンパスを見て、学部の歴史に詳しい方に実地見聞とっていただけませんかねぇ・・・

こんなに優秀で愛されているプラタナスだからこそ、神話の時代から親しまれ、カエデよりもきっと印象が深かったのでしょう。そこから似ている樹木ということで、カエデの方がシカモアと呼ばれるようになってしまったのではなかろうか?!興味は尽きません。

とはいえ、ここからが問題で木陰ができるということはそれだけ多くの葉をつけるということで、しかもその葉は結構な大きさですし落葉樹ですので、時期が来ると葉を落としていきますから、今度はその葉の処理を如何にするかという問題が出てきます。

成長が早く大きな葉をつける、いいところばかりに思いますが、街路樹として考えると、葉の処理や手入れ、剪定の費用が多く発生し、最近では樹種転換などで植え替えが進んでいたりすると事が多いようです。
俳句では秋の季語とされているらしいスズカケの葉も、現実の世界では落葉の美しさよりもその後の処理に観点が移ってしまうようで、少し残念。


プラタナス 3

公園などでのびのびと育つと、大きく枝を広げてそこに大きな葉っぱがつく姿は悠然としていて気持ちのいいものですが、一方先の街路樹はというともちろん刈り込まれることが多いので、その姿は少し異様だったりします。
まだ暑さの残る季節に、丸坊主どころか無残に刈り込まれたプラタナスをよく見てみると、枝先や刈り込みされた部分にボコボコとしたコブの様なものが出来ます。
これは剪定コブ、といって、同じ部分を伐る事によって出来るものだそうですが、それだけ頻繁に刈り込みされているということ。
確かに落ち葉の処理が大変(これらに関わるお役所の清掃費もバカにならない金額らしい・・・)という理由はわかるんだけれども、とにかく葉っぱのつくところは根こそぎ切り落してしまえ!的な刈り込み(というよりもぶった切り・・・)の後の街路は、何のために街路樹があるのか意味がわからない位に殺風景になります。
もう少し何とか方法ないものかと、晩夏の風物詩の様になってしまっているのもまた残念。

人間たちめ、そんなに俺たちを刈り込んでいるとしまいに痛い目にあうぜ!!
ガブリ!!
とばかりにガードレールを一かじり!!

プラタナス9

なんでこんなに近くにガードレールするんでしょう。
そらかじりますわね、腹へってなくても・・・
鉄を与えると元気になると言われる「ソテツ」ではあるまいし、鉄分不足とも考えにくいですからねー(冗談ですが・・・)。

その特性をかわれて植えられたにもかかわらず、成長してくると刈り込まれ近年ではその成長スピードと多く茂る(落葉する)葉が逆に敬遠され、また、大きく育つ割には根が浅く風に弱いこともあり、特徴的な「鹿の子模様」も街路樹として採用されなくなっていているといいます。
以前に聞いた、どこかの公園のお話の様です。

プラタナス 2


しかしながら、そんなプラタナスだからこそ立派な板材が取れたというのは材木屋としては嬉しいところ。
斑も綺麗だし、優しい木目はインテリアも邪魔しないことでしょうし、成長の早い割には材の重硬さの目安である「比重」が0.6〜0.8という珍しい樹種ですので、しっかり感は醸し出せそうです。
あとは写真でみた割れがどうなるか・・・・
この夏の暑さでどう割れるかが怖い様で、楽しみです。

プラタナスは先の神話のお話に通じる、「正反対のものとのバランスをとるもの」としてバランスのシンボルと言われます。
広く枝を広げ、様々なものをその木陰で覆い守り、まるでその枝が天秤であるかのように・・・

プラタナス 8


プラタナスの木語は「天才、非凡」

あぁそうか、やはり一般には理解されにくい才能や非凡なものというのはその優秀さゆえに刈り込まれていくのだろうか・・・
全てに受け入れられ認められるというのは難しいもの。
本来、人も植物もみんな天から授かった才能と、生きていくための術でそれぞれ進化し特徴をもってきたもの。
だからみんなが天才で非凡なんじゃないかな。
街路樹の様に等間隔で並び、大きさを制限されているような枠にはプラタナスは似合わないのかもしれません。
みんな画一的である必要なんてない、のびのびと育ち大きな葉をつけるプラタナスの様に、自分を伸ばしていけばいいんだ。
プラタナスの木陰では、そう思えるような気がします。

最後に有名な勧進帳の謡い出しは「旅の衣は篠懸の・・・」とある。
梵天房まではないにしろ、篠懸の葉が落とされる前に街路の木陰を歩いてみましょうか。




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