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木裏加工は悪なのか?!


物というものには、いろいろと使い方や決まりの様なものがあります。
それは木材でも同じ。
木材として使う場合の方向や裏表、木目の方向もその一つです。

それらは昔の人たちの経験や知識、失敗などから生まれてきた物なのだと思いますが、現在ではいろいろな技術の進歩や、厳密に木材の用途を突き詰めて使うというよりも、外観や仕上がりの良さに主眼を置かれることが多いので、実際のところは、「決まり」というほど機能はしていないとも言えます。

しかし、時々いらっしゃいます。きちんとその決まりを守って仕事をされる大工さん。または、その決まりを知って、その通りにつかっていこうと思われる方。
昔ながらの伝統や、経験から生まれた知識を活かすことはとても重要ですし、木を活かすには欠かせない事だったりしますが、あまりにもその知識にとらわれ過ぎると、それ以外の事が見えなくなる可能性もあります。

一つ例を挙げますと、稀に「木裏を使うような木はダメだ。」といわれることがあります。
無垢フローリングにしろ無垢の天板にしろ、板の様な形にすれば必ず、大きく裏と表が出来ます。
その場合に、木裏(きうら)といって木の中心に近い方を普段使いする「表面」として使用することはよくない、というわけです。ちゃんと木表(きおもて。木の皮に近い方の面)を表面にしないといけないということですね。
このことは、建築士試験でも出題されますし、通常は木表を表面とすることが通則です。

それは、木材においての反りや年輪というものに、木表と木裏とでは大きく差がある場合が多いからです。
特に、杉や桧などの針葉樹の場合は顕著です。
その顕著な差が、木を使ううえで「木裏と木表」として使い分けないといけない理由になってくるのです。
その一つは反り。
木表と木裏では反り方が違います。
この杉板の写真を見てください。

反り1














基本的には、木材を板にするとこのように反ります。
もちろん、用途によっては異なる場合もありますが、通常はこうです。
木表側に板の端っこが羽の様に上がってくるのです。

反り2














つまり、この法則があるので、使うときにはそれを考えておかないといけないということ。

そして次には年輪の形成による違いです。
これも写真で見てもらいましょう。

木表側がこのように見えますが、

木表














木裏側はこのようになります。

木裏














タケノコの様な木(年輪)の頭頂部を見てください。
よく見ると、木裏側では年輪の色の濃い部分=晩材部が色の白っぽい部分=早材部の上に乗っかる様になっているのがわかると思います。
これが引っかかりになったり、その部分によってはメクレになる場合もあります。
その為に、見えがかり部分などには木表を使うようにするのが「通常」の使い方なのですね。

だから、昔から表面に使うのは木表側と決まっています。
それをきちんと守ることは、木を正しく使うことになりますし理にかなっているといえます。
とここまでいうと、木裏を使うことはいけない事なんだ!と考えてしまいそうになります。
が、例外もあるのです。決して木裏を使うことはいけないことではないのです。

例えば住宅の屋根部材のうちの一つである「破風板(はふいた)」という部材。
これは地方によっては、わざと木裏を使うのです。
木を板材とする場合木裏の方が水はじきがよいといわれています。
その性質を利用して、常時雨がかりのある破風板には木裏を見えがかりに使うといいます。

また、「床(フローリング)に最も適した材とは」という記事で紹介したことがありますが、能舞台においての絵松を描く板は木裏を使います。
篝火の反射が少なく、絵が見えやすいようにといいます。
また、その舞台の床板も木裏使いであったりします。
それは、先の写真でもわかる様に、フローリングを木裏使いにする事によって凸型にフローリング表面が反ってきます。
すると、その部分を踏みならした時の音が良い、というのです。
それに滑りにくいのも木裏利用のうちのひとつです。

性質とは違い、人の都合でわざと裏を使うようにする場合もあります。
それは、「歩留まり(ぶどまり)」を重視する場合です。
もともと丸い形の原木である木材。
それを強制的に四角い形にして使うわけですから、必ず円い部分の端っこは使えない計算になってきます。
その使えない部分が多く出ることを「歩留まりが悪い」といいます。決して円い部分だけをいうものではなく、無駄になった部分をそう呼びます。
その無駄を極力なくすという意味で「歩留まり良く」使いきるために、わざと木裏を使うように製材をします。

それは、昔の桧のフローリングにおいては良く見られたことでした。
これを見てください。

木裏加工の表側(木裏)














フローリング表面には丸みが無いですが、これをひっくり返してみるとこうです。

木裏加工の裏側(木表)














円みが出てきます。
これが昔の木裏使いのフローリングです。
見えなくなる部分である裏側に円みのついた木表を使うことで、無駄になってしまう部分を少なくしようというものなのです。

木裏加工


 先の丸みの方では、既に実(さね)というはめあわせる部分が無くなっています(笑)。
昔ならではのものです。懐かしい。(これで、かなり値段がちがったのですからね・・・)





現在では、ここまではっきりと木裏使いにしている物は多くありません。(おそらく。)
ですが、円みは無いですが、木表よりも表情がいい場合や、歩留まりの関係で木裏使いの無垢フローリングがつくられることがあります。

ですが、冒頭の様に木裏を使うことがいけないことだと思われていると、これらの理由が知られないうちに欠陥品となってしまいます。
ちなみに、楢(オーク)やタモのような広葉樹であったり、外国で加工されたフローリングなどは、木表も木裏も区別が無い場合が多いです。
「木の文化」である日本ほど、細かく木を見て区別するということをしないという事もあるのかもしれませんが、それはそれで、節は節なりに、表情の良い方を活かすように製材する、というのが諸外国の考え方でもありますから、全てがいけないわけでもないということです。
広葉樹は反りはありますが、年輪の剥離というものがほとんどありませんし、表裏の区別を厳密にしない場合が多いです。

つまり木材にも例外があるし、使いようである。
木裏を使いきるのは外国人のいいとこでもあるのかもしれません。
だから、どちらが良くて、どちらが悪いというのではありません。
基本と例外だと思って下さい。

例え木裏加工でも、きちんとその性質を理解して加工乾燥させて出荷している方もいらっしゃいますし、その理由を教えてくださる方もいます。
当然、何も分からずになんでもあり!という木裏加工はいかがなものか・・・ですが、使う人がその理由を知り、つくる方もその性質を見て加工する。
そんな木裏加工というものが存在します。

以前に紹介したピュアラーチ(TENKARA・カラマツ)無垢一枚物羽目板ピュアラーチ(TENKARA・カラマツ)幅広無垢一枚物フローリングや、後で紹介する北洋赤松(ほくようあかまつ・レッドパイン)無垢一枚物羽目板と同じく北洋赤松(ほくようあかまつ・レッドパイン)無垢一枚物フローリングもその一つです。
一元的な木表木裏ではなく、木を見て選別していますので中には木裏材が入っています。
ですが、これはきちんと活用している木裏材ですのでもちろん欠点のあるものではありません。

なんでも固定観念にとらわれると、その他の事が見えづらくなりますね。
木材も同じ。
木裏加工の木材を扱っているなんて!!なんて言わずに、きちんと加工されているかどうか、その性質を知って木裏加工しているのかをたずねてみてください。
正しく木を使える材木屋さんでは、その理由を説明して商品を見せてくれることと思います。



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