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桧が社寺仏閣に用いられる理由


皆さんは古寺名刹を探訪した際、その建築物に使われている木がどんな木か、見ることはありますか?!
私は、建築物とともに、そこに使われている木材を見ることがいつも楽しみにしていることです。
大門の柱や門扉の一枚板、またその製作手法、本殿の大きな梁やそれを支える柱など。

そういえば、以前京都大学にお邪魔した時に、法隆寺だったか?の解体修理によって取り出され、年代等の観測に使用された後の木片を見た事があるのですが、見るからに素性がよくまた、年輪が細かく綺麗で見とれていたのを同行していた友人の材木屋さんに「戸田クン、ヨダレでてるでぇ。」って言われたっけなぁ。
それくらい見てしまうということです。

さて、何の話かというと、木材の使用期限!!?と、使用材料の理由を古寺名刹を例に挙げてみようというわけです。
では、さっそくですが、お寺や神社などは一般的にはどんな樹種が使われていると思いますか?!
ひねくれて、青森ひばで作っているところもあるぞ!最近は総米ヒバ(べいひば)つくりも多いし、その方が美しいぞ!といったような答えはご勘弁を。
素直に考えて、「日本の桧」ですね。
ま、例外・・・というか、材の不足から台桧(たいひ、たいわんひのき。)や米桧(べいひ)などが使われていた時もありますが、それらは一応例外としてください。

では何故桧なのか?!

当然、白木で美しく、耐久性も高く優れた材であることからなのは言うまでもないですね。
でも、それだけではないんですね。


その理由とは、先ず一つに「昔は加工できる大径木が限られていたから」です。
有名社寺の建造された時代は今のように、製材機械や電気のこぎり等のない時代です。
初めはどうしていたか。
丸太材料をそのまま使うか、はつり取って(削って)形を整えて使っていたわけです。
そんな時に、桧以外でよく見かける社寺建築用材である広葉樹の欅材などは、硬くてきれいに割りにくいので使いにくいわけですね。
当然、重量も相当重いですから、運搬も大変だったからでしょう。
加工がしやすく大径の美しい材がとれる桧が好まれたのでしょうね。

そして二つ目。
使用期限というと語弊がありますが、木にも強度の上下があるんです。
桧は伐採後、200年間は強度を維持しつつ強くなっていく(厳密にはおそらく材がしまっていくということでしょう。)からです。
こんなことを書くと、「えぇ?伐採してから強度が上がる?200年も?!」と訝しがる声がきこえてきそうです。
実際、近年では「強くなる=強度が上がるということではないのでは?!」と研究がされていますので、科学的な証明根拠ではないですが、先人たちの知恵です、全てが嘘であるとも言いがたいのです。
じゃぁ、その200年を過ぎるとどうなるのか?!
徐々に、緩やかに下降していき、伐採後の新材とほぼ同レベルに落ち着くそうです。
先の「強くなる」というのも、飛躍的に強度が増すのではないですが、今度の下降線も伐採後1000年経過して、新材と同じレベルになるということなのです。
当然、乾燥による材のしまりや、粘りの違い、やはり生き物ですから細胞組織の安定などの要素もあるのでしょう。
そのことから、1000年以上現存する木造建築は桧でないと難しい、ともいわれているようです。

一方、先にも例示した欅の場合は、大木は調達しやすいのですが、やはり桧のような傾向はみられないようです。
欅の場合は、使い始めて徐々に強度が下がり、600年後には新材の約6割ほどに下がるそうなのです。
これらの差は桧と欅だからというか、樹種ごとや針葉樹と広葉樹との違いなどもあると思われるので、一概にはいえませんが、こういった傾向にあるようです。

また、丸太以外の欅が使われるようになったのは、木挽きさん(こびきさん)が現れてからですから、それ以前の建築に加工した形で使われていることは稀なようです。


それに、理由とまではいかないかもしれませんが、桧は昔から「真木(まき)」と呼ばれます。
それに対して他の木、特に広葉樹は「雑木(ぞうき)」と称します。
雑木林の雑木ですね。
その呼び名が示す通り、日本人が優良木といえば桧であり、神聖な建築にはもちろん「真木」を使っていたのです。
といっても、雑木=広葉樹は優れたものばかりですけど、やはり大昔は扱いづらかったんでしょうね。


また、蛇足ですが桧での社寺建築の優良材は「木曽桧」です。
当然、そおでない場合もありますし、それ以外の桧も優良なことに変わりはありませんが、昔の木曽桧のように何百年、千年という樹齢の条件を満たすことができないことでもやはり木曽桧は別物なんですね。

では、住宅はというと、木曽桧ではないんですね。
そりゃ一般的に木曽桧は高価ですから価格の問題もありますが、基本的には木曽桧は材質が柔らかであり、単純な建築強度としては他の桧と比較するとそんなに高くないからであるとという理由をきたことがあります。
また、木曽桧は大径の化粧材(その材の美しさを見せる材)としての用途が主であるからでしょうね。
わざわざ社寺のような高樹齢の木曽桧の大径木を「木をみせて」使うような邸宅もないでしょうしね。

彫刻で、木曽桧が使われるのはこういった材質の理由もあるからで、同じ樹種でも適材適所というわけですね。


こうやって考えると、どうして先人たちはこれらの事を知りえたのか、または、きちんと理解して使っていたのか(おそらく根拠があったんでしょう・・・)、いつも感心しきりです。
現在の建築や造作は、木の性質まで考えて造られていないことがあります。
今形があればいい、安くできることが最良、というようなこともあるでしょう。
やはりそれではいけませんね。
木の正しい用途を考えただけでも、こんなに理由があるんです。
今後もきちんと正しく木を利用していく上で、その性質にももっと着目する必要があるのだと、私は思います。

皆さんは、きちんと用途に合った木、使ってくださいね!!





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